1つの体に2つの心
★★★★☆
まさかヒロインの中杉小夜香まで主人公と同じような境遇になってしまうとは!
何だかんだでお互いに上手くやっているツトムとバーディーに対し、小夜香の負の感情はオンディーヌ時代の攻撃性と結びつき破壊的な行動を起こしてしまう。
この対比がさりげないながらも際立っていて良い巻だったと思う。
まだまだカタルシスには至らないけど次巻も楽しみだ。
伏線が次々と回収されて大きな転換を示す
★★★★☆
当初、掲載誌の変更とアニメ化に伴う梃入れ程度かと思っていた千川つとむの新しい想い人、中杉小夜香さん。この巻では、事故の後遺症で昏睡中である彼女を中心に登場人物達の運命が大きく動きます。
前号から登場した中杉さんの意識を移植された妖しい人形(アンドロイト)「さやか」と中杉さんの入院先情報を交換条件として実験に協力するつとむの少々グロテスクでママゴトの様なデートを通じて生じてしまった情、そして甦った記憶により自分を生んだ実験を悪と断じて研究施設の破壊へと向かうさやの哀しい凛々しさ、そのさやかに研究一筋の変人・県先生が見せる仄かな情愛、第4特務自衛隊の職務に付いた千明の微妙な立ち位置、加えて国際宇宙的な陰謀に巻き込まれながらもどこかノンビリした登場人物達の日常描写が全てこの後の帝国復興を悲願とした亡国アルタ王族とレヴィの計画のウネリに飲み込まれてしまう展開にはやられました。
この巻の最後、ついにつとむ=バーディーと敵の首魁天才犯罪者レヴィが対面します。今後更に、主人公達の運命が翻弄される予感にちょっぴり胸が痛みながら先が楽しみです。
お薦めです。
さやか大暴れの巻
★★★★☆
表紙の絵はバーディーだと思い込んでいましたが、ああこれは中杉さんですね。バーディーはもうどんなきわどい格好をしても「うは〜」とはなりませんね。「少しは落ち着いたらどうですか」と思うぐらいです。むしろおまけマンガの最後の一コマにズキンときました。
今巻はバーディーの活躍がない代わりに、「さやか」が大暴れ。中杉さんの心情を思うと不謹慎な書き方かも知れませんが、やっぱりアクションあってこその鉄腕バーディーですね。
せつないなぁ
★★★★☆
廃刊になったヤングサンデーからビッグコミックスピリッツに移って、もう5巻ぶんがたまったのですね。という感慨はさておき、今回の話は切なかったなぁ。主人公の千川つとむの想い人の、中杉さやか嬢が交通事故で意識不明の状態におちいり、あろうことか、その人格だけが殺人プログラムを組み込まれたアンドロイド(通称、人形)の中に埋め込まれて、彼とバーディの前に現れる。
SF的には、オーソドックスといえばオーソドックスな展開だけれど、初恋の人がアンドロイドの中に人格として立ち現れる、しかも、自分はそれを見ているしかできない、またそのアンドロイドの中ではベースの殺人ロボットの意識もちらちら見える。。。青春ものの葛藤が入っているところもこの物語が重すぎずになる要素ではあるのだけれど、今回のこのシチュエーションは切ないです。
もしも、本体の中杉さやかが目覚めたとき、アンドロイドの中の仮想人格はどうなるのか。あっさりとフォーマットしなおすことですべては割り切れるのか。そこに生まれた意識はどうなるのか。そもそもが千川の今の状態も、ある意味でいえば本物の体をなくした仮想人格であるところが、簡単なわりきりを実は許さない。仮想人格なのだから消してもいいという話でいくのであれば、記憶さえ移せば今の千川の意識もふっつりと消されることをこれ良しとしなければならない。今のところ、そのあたりが問題にならないのは身体のほうが生存もままならない状態で意識すらないであろうという前提があるからだが、もし、千川の身体のほうの本物の意識が復活したら、そして、そちらの人格がいまの千川の人格を拒否したら、、、まぁ、そんなところで物語がややこしくなっていくことはないんだろうけれど、そういう危うさをはっと感じさせる設定と展開なのでした。
アンドロイドに、こんな身体はいやかときかれて「中杉なら、どんな姿でもいい」とこたえてしまう千川。気持ちはとてもよくわかるだけに切ないなぁ。。。