すばらしい!
★★★★★
立川談志と同じ小さん門下で、
一緒に真打になった柳家つばめのが書いた
落語家と落語の世界の話。
とにかく、
落語への愛で全編満ち満ちている。
だから、読み手に対しても、
「わかってほしい」というのがよく伝わってくる。
本は、
噺家が、入門してから弟子をもつに至るまでを、
だいたい時系列にして進んでいくので、
もしかすると、噺家になりたい、という
人にとっても有用であるかもしれない。
なかに、安藤鶴夫の評がある。
「芝居と義太夫の話を聞いた。実に面白い。自分がうまいと思った人の芸を説明するのだが、自分が、まっさきに惚れ込んじゃうから、力が入る。説得力がある。どうも惚れっぽい人らしい。評論家としてはどうかと思うが、それを表現するには、一番の強みだ。」
この評が、そのまんまあてはまるくらい、
この人は落語に惚れてるのがよくわかる。
落語と落語家、寄席を知るための良書、よくぞ復活!
★★★★★
『創作落語論』に続いて河出文庫から再販された本書の初版は昭和42年、
著者38歳の時である。
この本の魅力は次のように言えるだろう。
(1)落語家や寄席の世界(まさに「落語の世界」)を知る絶好の入門書
(2)柳家つばめが活躍した時期の落語界を知る歴史的に価値のある書
(3)柳家つばめという噺家自身のことを知ることができる書
言わば、落語という「空間」、ある一定の「時間」、そして五代目柳家つばめ
という「人物」に関して、よく出来た本である。
二十一ある各章を通じて、なかなか素人が知ることのできない「落語の世界」の
裏表を分かりやすく解き明かしてくれる。
例えば、よく比較される同門で同年入門、かつ同期で真打昇進をした談志家元や
当時二十代だった古今亭志ん朝を含む同時代の当時の“若手”落語家たちに関する
著者ならではの寸評があったり、落語家が二つ目時代に直面する心理的葛藤のこと
が赤裸々に語られていたり、なかなか知ることのできない下座さんの仕事の詳細な
紹介があったり、今日の若い落語ファンも楽しんで読めるであろう内容が満載だ。