副題負け
★★☆☆☆
副題に福沢諭吉・井上哲次郎・和辻哲郎とあって、大いに興味をそそられます。ここに教育勅語の井上毅が加わって、様々な謎が解明されると期待しました。特に井上哲次郎を取り上げたことはすばらしい着眼点であると思います。豊富な引用文献も貴重です。
しかし、「福沢は井上毅に、全くといっていいほど触れていない」(P112)とあって、従来の読み物と同様で、新しい見解はありませんでした。それと井上哲次郎『勅語衍義』稿本にたいして明治天皇と井上毅が不満だったことは明治天皇紀に明らかですが、それは解明されていません。P111の井上毅「五倫と生理との関係」の引用も意識的に改ざんされています。「之を内外に施して」ではなく「之を中外に施して」が本当です。意味の違いに気がついていないのは、文脈から明白です。教育勅語の「斯の道」が徳目から肇国の精神となって、八紘一宇に発展した「国民道徳」を解明して欲しかったと思います。再挑戦を期待します。