人間としての哲学者・田辺元 の面目如実
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ここに収録されているのは1950年から1961年まで取り交わされた書簡346通である。作家の野上弥生子と京都帝国大学哲学名誉教授の田辺元の人間性が明快に浮かび上がる、心温まる親愛にみちた書簡集である。野上弥生子の日記を組み合わせて読むと、ますます味わいが深い。
もし岩波書店で第二版を出すとしたら、索引と後記(注釈)がつくと、より研究本としての価値があがることであろう。田辺哲学の研究者、京都哲学の研究者のみならず、「老いとは何ぞや」「人生を如何に生きるべきや」といった質問を持った読者なら誰でも得るところが大であろうと思われる。
その反面、興味本位の読者はあまりにも得るところがないのに呆れることであろう。
高尚な純人間的なロマンチック、それがこの本のエッセンスである。大いに推薦致したい。