"Empathy" は、「共感」あるいは「感情移入」で、前者は双方向後者は一方向でしょうが、とてもわかりやすく、しかも納得しやすい概念です。
動物の例が多数挙がっているのは、著者が動物の行動を調べる研究者だから当然ですが、私からみると動物の話は解釈を聞かされる隔靴掻痒で、人間の例の場合なら著者の解釈でも私たち自身が経験する事件としてその解釈を納得し、本書の用語をつかえば共感の度が強いようです。
本書を読みながら、こんなことを考えました。「共感」というテーマは、講義や文章の上でも重要なポイントかも知れません。学生や読者に教えようとするのではなくて、共感してもらうアプローチが納得を呼びそうです。
思い出したことですが、テレビ番組の『ためして合点』（NHKテレビ）を私は好みませんが、理由は司会者が実際に自分でためす場面が少なすぎる故です。司会者がそのテーマの権威でないとわかっているのに、ちょっと学習したことを得意げに話されても納得も共感も感じません。