ゼネラルマネジャー的センスの涵養を目指して、第1部でMBA教育の価値およびそのなかでビジネスゲームが果たしている役割を説明。第2部で1年次の必須科目群を紹介し、付録の体験版ソフトを用いた応用を通して各分野の理解を深める構成になっている。体験版ソフトとはいえ、市販モデルの中核的機能は備わっており、かなりの臨場感が味わえる。解説は、ハーバード・ビジネススクールに学び、経営コンサルティングと学問の分野で活躍中の著者が担当。初学者を対象に平易な説明が施されている。
市場のグローバル化に伴い米国流の経営観がグローバルスタンダード化するなか、MBA流の教育方式が日本でも必要になっている。もとより経営に唯一の解答はないが、ビジネス環境の劇的な変化が将来の市場を過去の延長で測ることを無意味にしつつある今日、帰納的な学習手法であるケースメソッドの効果が薄れていることは否めない。今後は、現実世界の探求のために構築されたモデルに基づいて仮想現実世界のさまざまな側面を体験させ、判断力を養うシミュレーションゲームの重要性が増すだろう。
汎用性のある経営学のコンセプトやツールをMBAプログラムで身につけた後、経営者を成功に導くのは、強烈な企業家マインドと行動力、知識を応用できる経営センスである。そのことを、このシミュレーションゲームに挑んだ読者は感じとるはずである。(徳崎 進)