素晴らしい!
★★★★★
「星の王子さま」について書かれた評論は多いが,これほど心を打つ本を私は知らない.本文は中学生でも十分読めるような平易で優しい言葉で書かれているが,巻末につけられた豊富な注を読めば,この著作がいかに精緻なテクスト分析に裏付けられたものであるかがわかる.著者は「星の王子さま」は「われ」と「汝」の物語であると言う.「わたし」が「それ」というモノではなく「あなた」という他者と向き合う時,互いは目に見えない絆で結ばれる.「王子とバラ」「王子とキツネ」そして「王子とわたし」.彼らはまぎれもなく「あなた」と「わたし」として出会い,目に見えない聖なる絆で結びつけられたものたちなのだ.そしてこの著者も,サン=テグジュペリと聖なる絆で結びつけられたものだろう.そうでなければこれほどサンテックスへの愛に満ちた,美しく透明な評論が書けるはずはない.