経済・文化・都市の新たな関わりを求めて・・・
★★★★★
■密度の濃い専門的な書であるため、
読み通すには一定の時間と根気がいりますが、
単に学識者や研究者にとどまらず、文化芸術関連に携わる実務家や政策担当者、
さらには広く文化芸術に関心を持つ市民にとって、
豊かな示唆を与えてくれる意欲的な書です。
文化、経済、都市の関わりを、<創造>という切り口から切り結ぶことにより、
まさしくタイトルが示すように、新しい文化と都市の公共政策を展望します。
かつて曲がりなりにも経済学という学問をかじったことがあり、
また趣味として音楽のある生活を享受している私にとって、
経済と文化との関わりはライフワ−クともいえるテ−マです。
■海外の都市に例を求めるまでもなく、
日本の各地域でも、文化を切り口にした街づくりや産業振興などの
ユニ−クな取り組みが、着実に広がりを見せています。
そうした動きを反映するかのように、文化経済学会<日本>の創設(1992)を契機に、
文化政策と名の付く学部や学科を新たに設ける大学が誕生するなど、
教育・学究分野にも新しい風が吹いています。
国、地方を通じ未曾有の財政危機が続き、その政策展開に閉塞感の漂う今こそ、
ここで示された構想を一つの手がかりとして、
新たな都市政策の局面が切り開かれればと願うしだいです。