読みやすい
★★★★★
翻訳が良いのか、原文が良いのかは分かりませんが、翻訳本にありがちな読みにくさがありません。まるで新聞記事を読んでいるかのように、さくさく読むことができ、内容に集中できます。そして、その内容も臨場感があり、その場の雰囲気が良く伝わってきます。現在進行しているギリシャ危機でもこのような舞台裏があるのだろうなと重ねて読むことができて興味深いです。
スピード感のある好著
★★★★★
このテの経済に関する翻訳書でいちばん大切なのは、スピード感である。それは、この書の翻訳をススメた「張本人」である、気鋭の、そして、信頼するに足る経済学者、若田部昌澄氏が「解説」に書いていることでもある。
2008年の秋、次々新聞の見出しを塗り替えるように騒がせた、アメリカ金融界の一連の、そして未曾有の、「事件」に関し、物知り顔のネット野次馬はともかく、名のある経済学者でさえも、ほんとうのところはどうなのか、誰も一般読者に、納得がいくようには説明し得なかった事柄が、若田部氏の望み通り、「スピード感のある訳文」で、心ゆくまで説明されている。
アメリカ発の、「今」を説明してくれる経済書は多々翻訳され、斬新なタイトルにつられてつい買ってしまうが、いざ読み出したら、訳文がもたもたしていて前に進めない……といった経験はないだろうか?
本書は、原書が出てからの期間も非常に短いが、文章もきびきびしていて、膨大かつ綿密な取材をしたものでありながら、読者を飽きさせることのないスピード感溢れる読み物となっている。
本書を読んで驚くのは、中央銀行が、国家を超えた力を持って国の行方を左右していたという事実である。そして、人間である以上、どんなに知識の豊富な人間も間違える。間違えたことが悪いのではなく、ここには、それをちゃんと記述した透明性がある。経済学者と同等の、あるいはそれ以上の知識を持って、ことを解明する、真のジャーナリストがいる国はうらやましい。
金融危機の裏側を知る好著
★★★★☆
早いもので、リーマンショックの頃の話は、人々の記憶から遠ざかろうとしている。
本書は、ベアスターンズやフアーニーとフレデイ、リーマン、AIGの救済(破綻)劇の実態がどうであったかをウオールストリートジャーナルの経済担当エデイター(ピュリツアー賞2度受賞)が、記録した渾身の記録、いや歴史そのものだ。
誰しも注目するのは、冒頭のリーマンショックの部分であろう。ポールソン財務長官(当時)は、あの時「リーマンを救おうと思ったことは一度もなかった」と語ったが、実際はどうであったのか?そして、その裏でバーナンキはどう動いていたのか?
小生は、偶然にも以前にバーナンキの講演録であるリフレと金融政策を読んでいたのであるが、実際に彼はそこで述べていた「作戦」を果たして実行できたのか?できたとして、それは「実効」あるものだったのか?
それらは、すべてここで明らかになることだろう。