血糖の下げ方が間違っていたのだ!!ACCORD試験に学べ!
★★★★★
筆者は開成中学・高校6年間主席、理科3類現役合格、東大医学部卒、若くして渡米、
1流財団の研究室に勤務、と超エリート医師街道をまっしぐらに歩んでいた方でございます。
もし「例の事件」が無かったら今頃、海外有名大学の教授に納まっていた筈でございます。
しかし、今でも北海道の地から熱心に情報発信に努めておられるのは流石でございます。
先生がこの本を書く切っ掛けになったのは海外で行われた「ACCORD試験の失敗」であります。
ACCORD試験というのは、インスリンや薬剤を何剤でも使って血糖を厳しく管理した厳密管理群と、
程ほどに管理した通常群の予後を比べた大規模介入試験であります。
当然、厳密群が良い結果であろうとの仮説の元に始った試験でしたが、結果は衝撃的でした。
良いであろうと予想していた厳密群の死亡率がえかって高くて、試験は途中で中止になってしまったのです。
ACCORD試験の衝撃の結末を目にした先生は、こう言います。血糖値は少しぐらい高くても大丈夫と。
結局、血糖の下げ方が間違っていたのですな。
糖質をたんまり食べさせた上で、インスリンや薬剤をガンガン行けば、食後血糖は乱高下。
それは細胞にとって大ストレスですよ。
寿命が短縮するのも当たり前でございます。
日本でも同じような介入試験がJ-DOIT3と銘打って、門脇孝東大教授の主導のもと現在進行中です。
「我々はACCORD試験のような無茶はしないから」と自身満満ですが、果たしてどんな結果になるのやら。
しかし糖尿病人の方、大丈夫ですよ。
インスリンや薬剤でなく糖質制限で厳密に血糖管理すれば、全然違った結果になる筈ですから。
それが「真の厳密管理群」と言うもんです。
102Pで先生は「多くの人から支持を受けるであろう」と糖質制限の可能性を大いに評価しておられます。
実に素晴らしい。
糖尿病の患者さん全てに、江部先生の著作と同時に読めれることをお勧め致します。
糖尿病治療に肝心なのは医者との相性
★★★☆☆
糖尿病治療を長続きさせるのに一番肝心なのは医者との相性である。
なにせ、患者は10年も20年お患者をやっているので、
下手な医者よりはよほど専門知識にも精通していて、
偽医者くらいできるレベルになっているのである。
だから、アコード試験の評価はまだ確定されていないことも知っているし、
かといって、過度の血糖コントロールがかえってストレスになるのは
実感として分かっているし、血糖降下剤には大別して3つあることも知っているし、
それこそ、この著者の医者はいろんな薬を混ぜて使っているんだなあとも思うし、
書いてあることに、目くじらたてて怒るような間違いもないが、
あっと驚く卓見もありませんでした。
しかし、本を買ってしまう糖尿病患者の悲しさよ。
ま、糖尿病患者にとって一番いい主治医とは、できれば、友達言葉で話せる
相性の良い医者だと存じます。
内容はとても良い
★★★★★
表題は人の耳目を引くためにやや過激になっていますが、よく読むととても良いことが書いてあります。糖尿病治療において、ヘモグロビンA1C6.5以下も目指す強化療法、さらに血糖降下作用の強いsu剤とインスリン注射を併用する治療法の限界が明らかとなり、患者さんの病歴、リスクファクターに基づく層別のテイラーメイド医療が必要となっていることが結論であろうと思います、今まで以上に個々の患者さんの状況をしっかりと把握し、個々の患者さんにあった医療が求められる時代になったのだと思います。
開成6年間主席を通し、現役理3で、あの事件がなかったらきっとどこかの教授になっていたであろう著者が北海道で開業され、お元気かと思っておりましたが、北海道北見の地に根づき、文献をしっかりと読みこなされて今回この本を出されたことに改めて祝福とエールを送りたいと思います。
インスリンを使って、血糖値だけ厳しく管理することへの疑問
★★★★☆
筆者は、2型糖尿病は、多くの場合、インスリンの分泌の問題ではなく、インスリン抵抗性の問題であるとしている。(wikiによれば、日本人にはインスリン分泌に問題がある人も多いということだが)
そうであるならば、インスリンを使って、血糖値のみを厳しく管理しても、本質的な問題は改善されないうえ、作用が強すぎて低血糖をきたすことがあり、弱っている心臓には負担が大きすぎる。おまけに、厳しすぎて達成できない目標が、かえって患者のやる気をそぎ、ストレスになるため、本質的な治療効果が上がらないのではないかということだ。
私は糖尿病ではないが(境界型です)、知り合いに1型糖尿病の人がいる。食後は必ず歩き、食事制限もよく守っているように見えるのに、HbA1cが6以下になることは少ないそうだ。あの人があんなにやっても達成できない基準には、私も疑問を感じるし、それをインスリンで無理やり下げるのは、返って身体に負担をかけるのではないかと推測できる。身体にかかる負担を最小限にして、破局を防ぎ、その間に運動をして体重を落とし、インスリン抵抗性を改善することが大事なんだろう。運動は断然大事。帯や副題が、やらなくて良いほうばかりを強調し、運動をしなければいけないことを強調していないのが残念。
もうひとつ
コーヒーは血糖値を下げるんだそうで、コーヒー大好きの私には朗報でした。
2008年にアメリカで報告された「アコード試験」を主な根拠に糖尿病について述べた本
★★★★☆
2008年にアメリカで報告された「アコード試験」を主な根拠に糖尿病について述べた本。内容は興味深いが,残念ながら肝心の「アコード試験」に関して,「1万人を調べたアコード試験ですら,研究には300万ドル(約300億円)かかったとされています。」(p.136)というでたらめな記載がある点が残念。