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働きすぎの時代 (岩波新書 新赤版 (963))

価格: ¥842
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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ラディカルでなく、わかりやすい高度資本主義批判の書 ★★★★★
この本は、目次を見るとその内容がかなりよくわかる。各章のタイトルには「○○資本主義」という副題がつけられている。これもまたわかりやすい。さらに、各章の内容である見出しを見ると、何が書かれているのか想像がつく。ひとつひとつの用語の選び方がうまいからのか、独特にすぎる用語が避けられているからなのか。また、英語の文献からの引用も多く、そのためカタカナ語も多用されているように見えるが、ひとつひとつの語に対して多すぎず少なすぎない、必要でしかも十分な説明が加えられている。難しい用語に対する親切でしつこくない配慮がなされていると感じる。
 さて、内容である。本書は、現代の資本主義の変化、高度資本主義の4つの特徴を軸として構成されている。各章の本題と副題をひっくりかえして表示してみる。
第一章 グローバル資本主義の逆流 − 世界に広がる働きすぎ
第二章 情報資本主義の衝撃 − 家庭も出先も職場になった
第三章 消費資本主義の罠 − 消費が変える雇用と労働
第四章 フリーター資本主義の大波 − 労働の規制緩和と二極分化
 以上の現状分析を終えたあと、「第五章 労働基準とライフスタイル」、「終章 働きすぎにブレーキをかける」では、働きすぎからの出口を探る。
 本書全体の著者のスタイルは、問題の原因である悪者を攻撃するというものではなく、問題の原因である制度・仕組みとそれによって引き起こされた現実・事実を論理的に積み上げて読者に示していくというものである。悪者を批判するだけでは何の解決にもならない、複雑で強力な高度資本主義という構造を批判的に説明するには非常にすぐれた方法だと思う。
 私が個人的に強い印象を受けたのは第三章である。消費資本主義の罠とは、「働きすぎと浪費の悪循環」のことである。本来必要でないものを必要だと思わされ買わされる。もちろん消費者本人は買わされているとは考えず自分の意思で買っていると思うわけだが。その結果、それを買うために余分に働くことになる。これもまた、自分が買いたいものを買うために、自分の意思で余分に働くという外見をとる。消費者でもあり労働者でもある人間が自分で自分の体を食い尽くすという身の毛もよだつ構造がそこにはある。この説明を読んでいくと自然に、その背後に悪者=搾取する者がいるということがわかってくる。
 全体的にラディカルな雰囲気が強くなく、保守的な考えを持った人々をも含めた幅広い層に聞いてもらえそうな書き方になっている。
 なお、随所に統計が示されているが、それが古いものになったとしても(本書は2005年の出版)、本書の論理構成や論理展開自体のもつ価値はゆるがない。高度資本主義が幅を利かせている限り、一読の価値があると思う。
働きすぎの時代はあった。超過勤務を支払わなくても、法律違反をしているとの認識がない管理職。 ★★★★★
働きすぎの時代はあった。超過勤務を支払わなくても、法律違反をしているとの認識がない管理職。

グローバル化
 海外での労働管理に直面すると、日本での管理方法の課題がわかるかもしれない。
情報革命
 情報の集中は防げたが、新たな格差は作った。
消費社会
 使うことがいいことだとうのは、背景として働くことがいいことだがあったのかもしれない。
規制緩和
 規制緩和は、働きすぎを防ぐ意味もあるかもしれない。

出版から3年しか経っていないのに、もう現状の労働環境にそぐわないのが驚き ★★★☆☆
現在の職場が、
あまりにも残業を「あたりまえ」と
みなしているのに疑問を感じ同書を手にとりました。

終章『働きすぎにブレーキをかける』は
アリキタリな内容ですが、非常に参考になりました。

ただ、他の部分については、
国際的な比較論や、
特にオランダのワークシェアについてなど、
予備知識として持っていた論が中心になっており、
物足りなさを感じました。

数字の解説がメインであり、
できることなら、日本国内に留まらず、
海外の部分においても、もっと「現場の声・生の声」を聞きたかったです。


学生が、
小論文を作るくらいのレベルには、
ぴったりフィットする作品かもしれません。
基本事項の確認なら ★★★☆☆
日本のお家芸だったワーカホリックが世界的に広がりつつあるという話。
もっとも、アメリカ以外は減少が上昇に転じたという程度の話で、日本人は
相変わらず世界で一番過酷な労働環境にある。

それと、データの引用の仕方。製造業なのか、その他なのか。正社員だけなのか、
パートも含むのか。その辺が実に曖昧なので、イマイチ読んでてのれない。
(実際、日米の労働時間比較など、実情と食い違いを感じる箇所もある)

終盤の対策編は聞こえの良いキャッチフレーズレベルでしかないが、基本事項の整理
としてなら有効か。
分析はするどいが対策は? ★★★☆☆
日本人は 50 年以上まえから「ワーカホリック」などといわれてきたが,いまや働きすぎは世界にひろがり,フランスでさえも労働時間をふやそうとしている.日本では過労死さえ頻発している.そういう時代のながれをこの本では数値的にとらえている.しかし,それではどうしたらよいのか? この本では終章が対策の検討にあてられているが,そこでのべられている大半のことは,ずっと以前からいわれつづけてきたことである.たしかに基本は重要だが,もっと現在の状況にあわせた対策をかんがえなければ,問題の解決はおぼつかないだろう.