私たちの神の道を知る
★★★★☆
日本人の「神」に対する態度を、非常に平易に語り説明した本。「自然」の恵みと災いに畏れ慎む感覚や、農業をはじめとする日々の仕事の守護を頼む願い、「私」という存在をあらしめる「祖先」への崇敬心や、「公」のために立派に生きしかし不遇の死を遂げた者たちを慰め称えたい思いなど、私たち日本人は様々な感性に基づき「神」を祀ってきた。そうして、「神」の偉大さの前で自己の矮小さを痛感し、世のため人のために生きようという意志と信念をつちかってきたのであった。
著者の、ところどころで「国家神道」を想起させるナショナリスト的なもの言いには、違和感をおぼえる向きもあるだろう。だがひとつの確固たる倫理的立場を自覚的に選び取った上での神道入門書として、本書はなかなかに説得力がある。人間が「道理」をわきまえ生きるとはいかなることか。それを真剣に考えるには、その土地に根ざした宗教的な心性に真摯に向き合うことは欠かせない。それを改めて実感させてくれる良書である。