ソーシャルメディアの面白さは、公私の編集にあり
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編集とは何か、編集とはどこへいくのかについて、編集の達人たちが、さまざまな切り口で語りつくした一冊。タイトルと表紙を見て、迷わずジャケ買いしたのだが、目次を開いた段階で”当たり”と分かった。これこそが、編集力のなせる技というものだろう。
コンテンツを送り出す側以上に、受け取る側に編集能力が求められている時代である。かつてパッケージされた状態で我々のもとに届いた音楽、ニュース、動画など、あらゆる情報が単体の情報として届けられるようになった。それらに意味を持たせるためには、自分の手でそれらを組み合わせ、そこに何かを見出さなければならない。個々人に編集能力がなければ、そこに価値は生まれない。
また、コンテンツを送り出す側も、個々人の編集を前提とした「メタ編集=場を作るための"弱い編集"」の能力が求められていると言う。この能力もまた、CGM全盛の時代には、万人に必要とされる能力になっていくのだろう。
最も印象に残ったのは「公/私を編む」という記述である。公・私のボーダーラインをあいまいにすることでクリエイティブが生まれるということは良くあることだそうだ。
”「私」の成立要素を「公」にまで少しだけ開いてみることで、日常における他者とのコミュニケーションに新しい回路が生まれる”。この一文、まさに、ソーシャルメディアの面白さの本質を言い当てている。
さらに私見だが、今後ソーシャルメディアがもっともっと面白くなるためには、”ソーシャルグラフそのものを、利用者に編集させる”という視点に立ち、どのように機能を付加するかという点にかかっているのではないかと思った。まさに、サービスの提供者側の”メタ編集”能力が問われているとも言える。
時代の変化にあわせて、編集の役割・内容も、大きく変わっていくものなのである。