日本人の死と霊魂をめぐるミニ事典
★★★★★
日本人の死やお葬式やお墓や霊魂観に関する知識が、バラエティ豊かにそして簡潔に説明されていて、これは非常に読みやすく、勉強になる本である。民俗学者の書いたもの、というと都市生活者だらけの近頃では、関心を抱きにくい地方の風変わりな慣習の羅列だけに終わってしまう場合もあるが、本書は現代の読者が読んでも興味をそそられる可能性が高い作品になっている。
「死の予兆」「湯灌」「枕飯」「野辺送り」「両墓制」「弔い上げ」「精霊流し」「祖霊」といった、いかにも民俗学的な項目はもちろんのと、それと併行して、「臨死体験」「リビング・ウィル」「自殺者」「無宗教葬」「戦没者」「千鳥ヶ淵戦没者霊園」など現代性の強い話題や、「過去帳」「仏壇」「即身仏」「立山布橋灌頂」のような仏教民俗的な事物、さらには「ナーチャーミー」(葬式後の墓参り)「トートーメー」(先祖とその位牌)「ニライカナイ」(海の彼方の聖地)など沖縄の事例もいくつか紹介されており、なんとも多彩でおもしろい。