注目すべきは能の大成者・世阿弥と足利幕府三代将軍・義満との絡み!
お互いがお互いの大事を成すという共通の目標のもとに惹かれながら、美しく、かつ激しく対抗し合う近づき過ぎない微妙な距離感が非常にいい味を出してます。かなり人物の背景を咀嚼してないと、こういうふうには描けないと思います。さすがです。
二人の苛烈な関係に追い風を送るのが、幕府に抵抗する南朝の皇子・紗王と側近・武緒。世阿弥と義満をただ能の世界の幽玄夢幻に閉じ込めて終わらせないで、現実的に二人のお!かれる立場を再確認させるいいタイミングで登場します。
紗王の妹で世阿弥の筒井筒の君である亜火との悲しいエピソードも、ドラマチックで切ない‥‥。
様々な立場に生きる人々の懸命な生き方と関わった世阿弥が、これらの切なさや悲しみを乗り越えて、芸に昇華させる過程をきちんと描いたところに、この漫画の一番の見どころが集約されているといえるでしょう。
オリジナリティを押し出しながら、史実を踏襲し、しかもこれだけ読ませる歴史漫画って貴重だと思います。