冨田勲というと、どうしてもミスター・シンセサイザーのイメージが付きまとう。しかし、このNHKテーマ音楽集を聴くと、古きよき日本の香りを漂わせた正統派のメロディを書かせても、天下一品の作曲家だったという事実を、しみじみ感じる。これまでに5本を手がけている大河ドラマのテーマなど、どれも素晴らしい。また、1分以内で番組のイメージを定着させるテーマを作ることにかけても無類のうまさを発揮する。
名曲として人気の高い「新日本紀行」のテーマ(1963~1982年)をはじめ、「ニュース解説」「きょうの料理」「きょうの健康」など、私たちの生活のそばには、いつも冨田勲の音楽があった。
古い音源は無条件におもしろい。「空中都市008」(1969年)の主題歌を歌う34年前の中山千夏の歌のうまさ、かわいらしさにはびっくり!
1990年代以降も、NHKスペシャル「蒼き狼 チンギス・ハーン」(1992年)、「アジア古都物語」(2002年)など、冨田の音楽はいささかも古びることなく、時代を超えて、いまもなお心をとらえるテーマを書き続けている。
作曲家・冨田勲の凄さを再認識させる、聴きごたえ充分のディスクである。(林田直樹)