読了前……
★★★★☆
本年度のフランツ・カフカ賞を本作の作者村上春樹氏が受賞したとのことで、チェコの賞なら、おそらく選考委員はドイツ語版で読んでいるんだろうと思い、購入してみました。届いて何に驚いたって、その厚さ。約4cmあります……。行間は多少緩やかなものの、600ページ以上を読破するのはかなり時間が掛かりそうです。原典となる日本語版は読んでいませんし、本書も読み始めたばかりですが、彼の初期作品に較べて、ドイツ語訳には向いていそうな内容と言えるのではないでしょうか。初期作品もドイツ語版で読むと独特の趣がありますが、やはり多少のズレのようなものが浮き出てしまいましたので。日本語ではある程度のリアリティの中に置かれた空気の薄い非日常的な感覚が、ドイツ語版ではそもそものリアリティ部分に亀裂が入って、それこそカフカチックな異界感に感じられてしまったり……。そういうのに較べれば、おそらく順当な印象を持ってもらえるのではないでしょうか。原典と比較してないので断言はできませんが。ヨーロッパでの村上春樹受容を考えるには、読んでおかなければならない一冊、ということになるのでしょう。さて、ノーベル賞、獲るのでしょうか?☆4つは期待感と、付属していたEselsohrband(とは言わないか……しおり?のようなものです)が格好良かったのと、これまでのものに較べて、格段に素晴らしい表紙に対してです。