この世の怪談を生むのはいつも人間
★★★★★
この人は人間や物事を観察する眼が強く、本当に心理描写が巧い。
特にこのような短編でその力は存分に発揮されているように思う。
高校生の頃本作の単行本を購入したのだが、その表現力に魅了され、
気に入った箇所はマーカーペンを引いて繰り返し読んでいた。
どの話もとても面白く、そして薄ら寒い切なさがあるのだが、
ベスト3を選ぶとすると、父親が次女の不倫→略奪婚問題を目の当たりに
する様を描いた『つわぶきの花』、同僚の女性との結婚を間近に控えた
サラリーマンの元に婚約者を誹謗中傷する手紙が届くようになる『怪談』、
平凡なOLが分不相応な買い物をすることから始まる『靴を買う』。
この3編だ。