Hiroshi Sugimoto
価格: ¥11,264
杉本博司の写真は時間と空間を止める。知覚の行為を遅らせて私たちの視覚の働きを明らかにすることは、彼の作品の明らかな要素となっている。杉本の最初の写真は、20年代と30年代に建てられた衰退した映画館だった。写真の露出時間を上映作品の長さに合わせることにより、ピュアな光そのものである、真っ白なスクリーンの輝きを浴びた劇場の内装を撮った。次に着手したのは陸から撮った『海景』の連作であり、これは今日もなお続いている。彼が世界中を旅した撮った海は、どんなに地理的条件が異なっていても、ぱっと見にはわずかな差異があるだけで同じように見える。しかしながらキャプションを見ると、カスピ海、リグリア海、黒海など、そのひとつひとつが異なる海であることがわかる。他のシリーズとしては、エンパイアステートビル、ル・コルビジェによるノートルダム・デュ・オー礼拝堂、安藤忠雄による光の教会(大阪)などを被写体に、記録するというよりはその建造物の本質を抽出したシリーズがある。
この本は以上のようなプロジェクトを含む、杉本博司の全作品をモノグラフ的に回顧するものだ。ほぼ未出版である近年のカラー作品としては、杉本のデザインによる完璧な均衡を誇る直島の護王神社や、『陰の色』と題されたシリーズが収録されている。二人の写真キュレーター、デヴィッド・エリオットとケリー・ブロワーが、杉本の作品を深く考察したエッセイをこの本のために執筆したほか、巻末には展示歴や文献一覧も収録されている。
デヴィッド・エリオット、ケリー・ブロワー、杉本博司によるエッセイを収録。
ハードカバー、25.4 x 27.9センチ/368ページ / カラー45ページ