人を不幸にする自由はあり得ない
★★★★★
冒頭で「・・・消費者被害がどのように出てくるのか、何がどのように問題となっているのかを具体的な素材から考え・・・ることが重要である。」とあるが、本書は消費者事件の最前線で奮闘する弁護士らが、まさにこのような問題意識に立ちながら、あらゆる消費者問題に言及していく。
456項の文体は、いかにも大学教授ではなく実務家が書いたものらしく、些かも無駄がなく、読んでいて息詰まるほどの緊張感を覚えます。豊田商事事件、琴風事件など、事例も豊富ですが、如何せん簡潔記述なので、これらは別途詳細な判例文献を参照したいです。
ただし、”消費者”としての実体験が浅い大学生には、必ずしも本書の事例は切実には感じられないこともあるかと思います。また民法の理解も不可欠です。消費者法が公務員試験や司法試験科目にはないことはもっともである、と思えます。
最終章「宗教トラブルと・・・」後のコラムにある、オウム真理教幹部に向かって、故坂本弁護士が言ったとされる言葉を、本レビューのタイトルに拝借しました。自らの生命を賭してまで闘う執筆者達の強烈な熱意が伝わってくる一冊です。