全体として、単にIDAの使い方をマニュアル的に説明するのではなく、実例付きでリバースエンジニアリングの基礎知識を織り交ぜながら、読みやすい英語で解説が行われています。また、IDA以外のツールとか、役に立つウェブサイトのリンクもちょくちょくと紹介されており、興味のある分野をさらに深く知りたい方には便利でしょう。

構成としては、まず冒頭の250ページで、IDAのまったくの初心者を対象とした入門トピックを一通りカバーします。このあたりが一番マニュアルっぽい部分ですが、それでも退屈せずに読めるのは著者の力量のおかげだと思います。

その次の150ページはスクリプトやプラグインといったIDAを使いこなすための話題が中心で、すでに普通にIDAを使えている中級ユーザーにも役に立つ内容です。残りの200ページほどは、IDAデバッガの使い方に加え、リバースエンジニアリングのケース別に有用な知識をまとめたものになっています。

さすがにx86アセンブリがまったく分からない人には無理ですが、ちょっとでもかじったことがあって、とりあえず英語が苦にならないならば、十分に読みこなせる書籍だと思います。

IDA Pro入門から中級まで幅広く読者層をカバーする内容となっている。本書を手にすると640ページという量に一瞬圧倒されるが、コードの読み方を中心とした説明がふんだんに盛り込まれていることもあり、実際のコードレビュー時に役立てることができるだろう。また、後半にはソフトウェア脆弱性発見手法や、コード難読化についての説明もあり、中級者もフォローする構成となっていることがより多くの読者を迎えることになるだろう。