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「秘めごと」礼賛 (文春新書)

価格: ¥1
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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前書きの宣言は勇ましいが・・・ ★★★☆☆
前書きにある「世の中、すべてが陽の下に晒されて、健全、清潔、安全であればいいというものではないだろう」という著者の理念、そして健全で暖かく「親切」な現代のさまざまな仕掛けが偽善に満ちていると同時に人の心から陰翳を失わせつつあるという点については私も全く同感である。が、中身は今ひとつピンとこない。その原因は、出だしの男性作家とその作品についての言説が持つ勢いと、終盤の女性作家とその作品に対するそれとが全く違い、尻すぼみだからではないだろうか。
序盤、谷崎から斎藤茂吉あたりまでは一つ一つのエピソードに著者自身の生身の声が聞こえ、通勤電車で読んでいた私としては、なにか好色本を読んでいるかのごとき、まさに「秘めごと」感を味わえた。だが、終盤、武田百合子や与謝野晶子にはじまる女流歌人の描く作品とそのエロティシズムについては考察というほどの言葉はなく、ほとんど作品や引用文を羅列しているとしか思えない。最後の数章では著者自身が原典を渉猟する際の「入手した作品を存分にしゃぶり味わい尽くす」(210頁)ような肉感性は感じられなくなってしまうのである。
秘めごとを礼賛し、エロスの陰翳の復権を擁護しようという人にして、女の作品の秘められたエロが語れない。カバー裏の推薦文には「ニッポン男児必読」と書いてあるが、これが「ニッポン男児」というカテゴリーにはまってしまった者の限界か。女性の秘められたエロを描き、入り組み湿った情念を不健全に語れるオトコはやはり谷崎ぐらいの変態でなくてはならないのだろうか。