大漢四百年の歴史の始まり
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「横山版三国志」を見ると漢の高祖についての記述が見られますが、
今作が正に四百年の基礎を築いた劉邦と西楚の覇王項羽の戦いを描いた興亡史です。
今作は「仁の劉邦」と「武の項羽」と非常に分かり易い対比な為、直ぐに作品に入っていけるでしょう。
その武は天下を覆う程と称された項羽と百敗将軍とあだ名される劉邦でしたが、
賢臣や忠義の臣に支えられる劉邦は次第に項羽を追いつめていきます。
天下最強を自負していた項羽ですが、家来の意見をき聴かず敵対する都市の住民を虐殺する等自然と人心を失っていきました。
負けても負けても人が集まってくる劉邦と一度破れてそのまま滅ぼされた項羽の対比は、
我々現代人にとっても良き教訓となることでしょう。
今作は「史記」と違い烏江の畔で終わります。(どの場面か分かりますよね?)
横山先生は猜疑心に捕われた晩年の劉邦を再び描くのに忍びず、
あくまでも合戦物語として完結させたかったと述べています。
確かに作品の余韻としてはその方が良かったと思います(後日談が気になる方は史記を参照)
中国でも農民から皇帝に上り詰めた劉邦は英雄として崇められています。
是非今作を手に取って貴方もその魅力に触れてみて下さい!( '∀` )∩
三国志の元となる漢王朝創設の物語
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横山光輝作の項羽と劉邦の全12巻(文庫)セットです。
今のところ商品画像がありませんが、武将の顔が書かれた紙の箱にきっちりと入っていて、セット専用の特典などはありません。
一巻ごとに武将のイラストが描かれたしおりが入ってますが、これはバラで買ってもついてると思います。
本の大きさが三国志の文庫版と同じ作りで、表紙にはそれぞれ違う兵馬俑の像が大きく印刷されています。
項羽と劉邦とは、紀元前206年頃、万里の長城で有名な秦王朝が腐敗して国中が乱れる中、
中国史上初の農民による大反乱から始まり、やがて中国全土を巻き込むまでに至った項羽と劉邦
の二人の英雄による壮絶な天下統一までを描く物語です。
劉邦は農民の出ながら天下統一をはたして三国志の元となる漢王朝を創設し、優秀な部下の助言をよく聞いたため
偉大な君主が臣を輝かし偉大な臣が君主を輝かすと今でも君臣関係の理想と評されています。
項羽は覇王の語源になった人物で三国志の呂不と並んで中国史上最強の男だといわれます。
後の三国志の呉の孫策につけられた小覇王というあだ名も項羽をもじったもので、コーエーの三国志シリーズでは呂不と並んで武力の能力限界値100を独占しているほどです。
内容はさすが横山さんという面白さなんですが、三国志を何度も読んだ私としては、三国志のときなら1コマで描けたんじゃないかと思う動きを2コマ使って描いていたり、少し三国志を完結させた疲れが残っている印象を受けました。
ですが三国志を読み始めたころは中国史なんて知らなくて、だけどもっと調べたいと思っていたとき、
この項羽と劉邦は作者が横山さんだからこそ迷わず購入できた作品です。
最後に項羽と劉邦は三国志の元となる物語ですが、横山さんは三国志が完結した後でこれを描いたので、全体的に三国志を読まないとわからない描写などがあり、
まだ読まれてない方は先に三国志を読まれることをお勧めします。
俺的に一番好きな作品
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誉れ高い傑作三国志には及ばないかもしれないが、
三国志が主力三勢力が織り成す複雑さより、単に二勢力のこちらの方が読みやすい。登場人物が漢楚どちらかのみだからだ。
また、人物の個性がよく表現されている。鴻門の会は大変面白い仕上がりとなっている。(個人的に一番好きな話。)
だが、漫画であるが故、史記と食い違っている点も所々ある。
しかし、そういった相違点が不思議と自然なかたちで、より合理的に話がすすんでいくことにこの作品がどれだけ練り込まれたモノかを感じる。と、いうとオーバーな表現かな(-л-;)
一生に一度は横山先生の作品を読んでみるべきですよヽ(^O^