わたしは、この作者の彼が感じて捕らえた
ひとつひとつの街…集合体…
結果的に「0円ハウス」という地図を夢中で描き出した感じが好きだ。
まるで、小学校の帰り道、独自の秘密ルートを開拓して
いくつもの不思議な地図をつくりだしたような
そんな気持ちにさせられる。
そう、トンネルをくぐったら別の次元があるような。
そういう遊び心がここにはある。
わたしはこの写真集をはじめから
単にホームレスの家の写真という狭い枠組みでは
見ていない。
なんて面白い「写真集」だろうって思っている。
それぞれのハウスの所有者、つまりホームレスの姿が画面にはほとんど登場しません。これを「建物にこだわった写真集」と感じる読者も中にはいるのかもしれませんが、私はそれとは異なる印象を持ちました。「写真をとっているところを見つかったらマズい」とばかりにビクつきながら、それぞれの所有者が現れる前に慌ててシャッターを切って走って逃げる著者の姿が透けて見えるのです。
というのも、かなり多くの写真でピントが合っていなかったり、手ぶれしてしまったりしています。
68~69頁には所有者であるホームレスが廃材を燃やして暖をとっている姿も映っていますが、著者はハウスが建つ敷地を囲う金網のこちら側から写真を撮ったということが分かります。被写体と撮影者との間に相当な距離があり、これも隠し撮り的な印象が強く感じられます。
ことほどさように、撮影者のあわてぶりや及び腰ぶりが見て取れるのです。
結局のところ、著者とホームレスとの間には取材する側とされる側との信頼関係が一切成立していないようです。そもそもそんな関係を取り結ぶことが必要だという発想が著者にはないのでしょう。
私はなにもハウスを作ったホームレスも写真に撮るべきだといっているわけではありません。事情があって路上生活者となった人々が被写体になりたいと考えるわけはないでしょう。しかし、そのハウスをピンぼけや手ぶれの写真に収めたということの裏事情を想像すると私はやはりこうした写真集には懐疑的にならざるをえません。
だから私はあえて言います。この著者、こんな写真集出して、恥ずかしくないのかな。
あくまで建造物にこだわり人物が登場しない.なのに部屋の奥まで入り込めているのは何かあるはず.そこまでは感じ取れのですが,そのことがもっと写真に表れ,冊子枚数が減ると素敵です.
一度見て下さい.