なぜ、今改正が必要なのかの点
★★☆☆☆
民法界をリードし、自ら改正作業に携わる内田先生が自ら債権法改正の基本方針について説明されている書籍です。
各論の箇所で改正のポイントをそれぞれ逐一解説されている点はわかりやすいです。
しかし、根本的になぜ、今改正が必要なのかの点が説得的でなく、また、債権法改正の基本方針と銘打っていながら「あくまで個人的見解」とされる箇所が多くしかも渾然一体としているので、改正部会で殆ど了解の得られた箇所なのか内田先生の私見なのか分かりにくいところが多く残念です。
特に今改正作業がなされていることに懐疑的な立場に対しては、「今の民法の条文は一般国民が読んでも到底理解できない内容で改める必要がある」「諸外国に比べ条文数が少ない」から等と記述されています。
しかし、プロにしか分からないとの点は民法に限ったことでもないし、外国との比較も決定的でなく、そもそも実務上の問題が生じていないのに、なぜここまでの大がかりな(改正直後は相当の混乱を招くだろうことが予想できるほどの)改正をすることになったのかの具体的経緯が明らかでないように思われます。
第一線の極めて多忙な学者達がこれほどまでに議論を繰り返したとこはない、改正の意義を根気よく説明していくしかない等述べられていますが、一部の派閥の学者が中心となって勝手に進められているとのネガティブな噂を打ち消すような説得的な根拠は上がってないと感じました。