失恋した心に染みわたる
★★★★★
タカラモノという曲を有線で耳にし、ああ何ていい歌詞なんだろうとCDショップに足を運ぶ。
大切な彼女と別れ、失恋したばかりの自分は、生きる意味を見いだせずにいた。
彼女の存在が自分のすべてだった。
いつもそばにいて温かく微笑んでくれた。
このタカラモノのカップリングで、『この手の中に』という曲がある。
たった一曲だが、価値のある曲だった。
初めて聴いて、芯から震えた。
歌声が優しい。
こんなに弱っている自分に、手をさしのべてくれる一曲だった。
夏も終わりの夕暮れに、車のオーディオで『この手の中に』を流す。
自然と涙が溢れてきた。
自分が大切にしてあげていれば、あの子とまだ一緒にいられたのかな…と。
きっと自分がおっさんになってもじいさんになっても、
『この手の中に』を流すと、同時に涙が溢れてくるだろう。
いまの情景が頭に浮かび、暮れゆく夕日につたう一筋の涙を、私は忘れない。
『手のひらにつかんだもの その時こぼれ落ちたもの』
それは、過去への執着と美化だった。
確かにこの一曲に救われた人がいた。
それだけで、『ナオト・インティライミ』が歌い続ける意味がある。