小さな小さな都会人
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古いTV番組、ウルトラQの中の一話「1/8計画」をご存知ですか?
人類の体を縮小して人口増加問題を解決しようという試みの話です。
本書に登場する人々の身長はハエと同じくらい! 1/8どころではない。
小さな人々が実際に都会で生活していると想定し、フィギュアを使って
写真で再現したのがこの作品だ。見開きの片側に我々の視点でみた風景。
もう一方に彼らの視点でみた風景が並べられている。
ちょっとした水たまりが大きな沼に、タバコの吸い殻はクッションに、
クルマはマッチ箱サイズ。けっこう生々しいシーンも登場します。
我々が抱える課題は彼らにとっても大きな課題のようですね。
これらは当たり前のごとく成り立っている我々の日常に対する
問題提起とも受け取れる。はかなき存在の小さな人々。
しかし視点を変えれば我々の存在もそう成り得るのですから。
小さなストリートアート。
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想像力をめぐらせば、何気ない日常のなかにもこの本に登場する小さな小人達の世界が広がる。
それは、幼いときに読んだガリバー旅行記の様であり、生活感にあふれた小人達のもう一つの世界であったり。見ていて思わず微笑んでしまう写真集である。
見立ての天才。
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すこし前から更新を楽しみにしているサイトがある。
それはわずか2cmほどのひとたちの日常や非日常の写真。
彼らはわたしたちと同じ社会で生活(?)している。
スリンカチュ(という発音でいいんだろうか)の手によるストリートアートである。
ところはロンドンの街中。
巨大なゴミ箱の足元でおばあさんがゴミ出しをしていたり
これもストリートアートと呼べなくもない壁の落書きを消してるひともいる。
殺人現場や麻薬の密売、旅行者たちに恋人たちとその演出には際限がない。
ただ可愛いだけじゃないのだ。
何より実際の大きさのものを彼らの寸法に合った見立てをしているのがお見事。
道路のひび割れ、雑草、表紙になってるマルハナバチ…。
じぶんがガリヴァーになってリリパット国に足を踏み入れてしまったような錯覚に陥る。
いや彼らがブロブディンナグ国に迷い込んだと言うべきか。
でもその錯覚は心地よい。とにかく観てて飽きないし、ワクワクする。
ストリートアーティストとしてよりも写真家として認められたいスリンカチュ。
とはいえこんなアートほかには誰も真似できないから、
もっともっとこのまま楽しませてほしいなぁ、と思っている。