知っているようで知らない振り仮名
★★★★☆
普段何気なく接している振り仮名。
しかしこの振り仮名がどういう変遷を経て今に至るのか知る人は少ないだろう。
振り仮名の歴史は思った以上に古く内容の濃いものであった。左右に振り仮名があった時代や、振り仮名をルビと呼び始めたゆえんなど、この本は僕にとって新しい発見だらけであった。振り仮名はただ漢字読めない人のためであったり難しい感じのためのものではなく、意味の補完も兼ねていたことは勉強になった。
振り仮名の意味や必要性を知ることができるだろう。振り仮名は日本の面白い伝統の一つではないだろうか。
小さな振り仮名に、これほど大きな歴史があるとは
★★★★★
「振り仮名」の歴史をたどっていくというのが本書の趣旨ですが、出てくるのがいきなり、匂艶と書いて「にじいろ」と読ませたりする「サザン」の歌詞。
続いて『吉里吉里人』の方言ルビや、マンガに出てくるルビなどが取り上げられたりと、まぁそんな感じで、肩肘張らずに楽しめる一冊です。
(それにしても、無茶なルビつけるよなぁ、サザン・・・笑)
考えてみればものすごくユニークな存在である「振り仮名」。
その歴史は日本書紀までさかのぼれるというのだから、相当に古い。
そして、平安、鎌倉、室町、江戸、そして明治から今に至るまでの歴史が語られるわけだが、それらを通して読んでみての感想は、振り仮名というのは意外と「融通無碍」だなぁ、ということだった。
やたらと凝った読ませ方をしたり、右だけでなく左につけてみたり、英語につけてみたり・・・。
そう考えると、「宇宙」と書いて「そら」と読ませるなんて、振り仮名の使われ方としてそれほど突飛ではない気もしてしまいます。
言語学上屈指の「無敵ツール」である振仮名に迫った一冊
★★★★☆
(特に)本読みはお世話になっている「振仮名」という、言語学的にも極めて
ユニークな特徴に迫った一冊。新書と言うことも有って、間口を広げる努力が
ここかしこに見えます。
振仮名と言う「無敵ツール」(本文の言を借りれば「漢字の読み方」と示す
という最も一般的な使い方から、どうしても漢字で書きたいが、そのままだと
意図が伝わらない or 伝わりにくいので補足説明そしてのそれ(例:宇宙
(そら)へ)もある。更には、外来語に添える振仮名(例:合図/サイン)も
あれば、日本語に外来語を添える変形振仮名もある(例:troubadours/トルパ
ドール))の説明をサザンオールスターズの歌詞や、漫画の台詞等、一般社会に
溶け込んだ「言葉」から行っています。
これをして著者は日本語には所謂「正書法」が無いとまで言い切っています。
確かに他の言語においては少なくとも「書き方」のルールは厳然としたものが
存在します。例えば"I want to go to 東京.".なんて書き方はあり得ないのです。
でも、日本語はこれが出来てしまう。日本語のあいまいさについては、今更
言うまでもありませんが、よくよく見るととんでもない言語なのです。
更に振仮名は何時、何処からやって来たのか?(大元は平安時代、そして室町
から江戸あたりで体系化がなされた。所謂、読み方の説明としてのそれと、その
言葉の意味を示す=言い換え語とも言える、としてのそれが普及した)。
ちなみに外来語の読み方を示すルビも江戸時代末期には登場していたのです。
そして明治以降、一気に出版物が普及した中、振仮名は今以上に一般的だった
ことが示されます。何と、(大衆向けの)新聞では、読み仮名としての振り仮名が
全ての漢字に振られていたのです(そうでない新聞もあった。そこに一種の階級
が存在した)。確かに記憶の底を掘り返してみると、教科書などに掲載されて
いた当時の新聞は総読み仮名付きでした。
・・・と言ったことを豊富な図版と共に著者の論を進めています。単なる読み
方指南を超えて、時には国語辞典の様な役割をし、また時には著者の真の想いを
伝えるツールと成す。
そんな言語学上独特の機能である振仮名の歴史に迫った一冊。タイトルの名に
恥じない出来栄えです。
振仮名にスポットライトを当てた、小さくも大きな一冊
★★★★★
これまでありそうでなかった「振仮名」に対する包括的な一冊。これにスポットライトを当てて、日本語の表記や歴史上に果たした役割を明らかにする。
サザンの歌詞、小説のルビ、漫画、古典・外国語の訳など、その多様な役割を確認しつつ、日本書紀以来の振仮名の実例を縦横無尽に駆け巡っていく。漢字を取り入れて、日本語表記体系に取り入れて、確立していく上で、振仮名が重宝され、単なる脇役としてではなく主役として日本語の表記を豊かにしてきた歴史が浮かび上がる。大胆に仮名を工夫し、取り込み、またある意味では「遊んできた」日本人の大胆かつ柔軟な姿勢と知性もお見事といえよう。