インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

志ん生一代〈上〉 (人物文庫)

価格: ¥300
カテゴリ: 文庫
ブランド: 学陽書房
Amazon.co.jpで確認
大名人・志ん生の鮮やかな軌跡。 ★★★★★
天衣無縫、融通無碍、自由闊達。

これら四字熟語は志ん生にこそ相応しい。

だが、そんな志ん生が売れだしたのは50歳近くからであって、
40歳過ぎまでは無名の噺家だった。

この不世出の天才落語家が、
厄年手前までは家賃も払えない貧乏神で、
醤油の量売りや保険の勧誘を試していたことに驚く。

いいかげんでぞろっぺいな志ん生が保険の勧誘なんて無理に決まっているのだ。

そんな志ん生も、落語にだけは生涯通して真摯に向き合ったことが
この本からはひしひしと伝わってくる。

借金から逃げ回ったり、寄席から離れてどん底生活を送ったりと、
うまくいかない日々がほとんどの生涯だが、
読後感は瑞々しい青春小説を読んだときのようだ。

ただ、藝の追求を一心に駆け抜けた志ん生の、
鮮やかな軌跡がそこにはあるからだろう。

なんでか全体のトーンが明るいっていうか飄々としてる ★★★★☆
 「ひでえ宿屋だな。まるで抜け雀の相模屋じゃねえか」。
 これは前座時代の志ん生(当時朝太)がつれの窓朝と旅まわりの果て、無一文で泊まった安宿を指しての言葉。「志ん生一代」には、こんな“まるで落語”の情景がポコポコ出てくる。まさにこの時代、“噺家が語る生活”と“語る噺家の生活”はニアリーイコールであり、聴くほうも噺にリアリティが持てたのだろう。
 15歳で家を飛び出し、親の死に目にもあえない親不孝者。かみさんや子供が出来ても、お約束の“飲む、打つ、買う”で、いつまで経っても貧乏所帯。その上、家賃もまともに払えず、夜逃げ、踏み倒しを繰り返すわ、師匠の着物を勝手に質に入れて破門を食らうわで、噺家としてもさっぱり芽も出ない。
 でも、なんでか全体のトーンが明るいっていうか飄々としてるんだよなぁ。芸が好き、落語が好きって一点が、すべてを救っている。結果論的に言えば、まるで落語みたいな生活経験が染み付いて、後年のなんとも言えない志ん生の味に結びついているんだろうけど。
 読んでいて楽しいのは、まるで志ん生の人生そのものが、ロードムービーを見るように、腰が落ち着かず、常に浮遊しているような軽みを感じさせることだ。もちろん旅まわりにもよく出るし、名前もコロコロ変わるし、引っ越してばっかだし、そういった表層も、まさにロードムービー風なんだけど、人生っていうか生き方そのものが、この人は旅なんじゃないだろうか。そして、その旅の道連れ、相棒にこの人は本当に恵まれてるね。女房のりんも出来た女だけど、噺家仲間や町の顔役の寅。べた付かず、それでいてお互い様で助け合う、そのさりげなさ。こういう関係って今じゃほとんど成立しないし、正直羨ましい。
 それにしても上巻400頁の巻末に至って、志ん生、まだ大化けの気配一切無し。そして下巻につづく。
こんな滅茶苦茶な男はなかなかいないよ。 ★★★★★
落語が好きな著名人の話やエッセイのなかでよく紹介されていた「志ん生一代」がやっと復刊した。以前、朝日文庫の上巻を古書店で偶然に発見し、帰りの電車で読んだが、飲む打つ買うを地で行く志ん生の滅茶苦茶な生き方と、結城昌治の筆のすごさに一発で引き込まれ、一度に虜になった。明治・大正の風俗、寄席の芸人伝。さまざまな要素が本書には詰めこまれている。
上巻を読み終えて下巻を探し回ったが、そんなときほど手に入らないもので、あきらめかけていたところ、復刊したことを知って、さっそく買い求めた。
「タイガー&ドラゴン」様さま。落語ブーム万歳!
志ん生をCDでしか知らない落語好きの人や、人物伝が好きな人は必読だ。

さて、老婆心ながら、本書を買われる際は、下巻まで一度に購入されることをお勧めする。
芸を極めるために必要なこと ★★★★★
志ん生が落語家で、しかも落語がうまくなかったら、ただのどうしようもない厄介者で、間違いなくのたれ死にをしていたであろう、と思わせるような、伝記である。

とにかくそのだらしなさは読んでいてムカムカ来るくらいである。
ここでしくじったら後がない、という場面でことごとくしくじってしまうのである。しかもその理由が毎回お酒と来たら、あきれるより他にない。

しかし、酒さえ飲まなければもっと早くに出世したかというと、そうでないところが芸の奥深いところである。
酒でしくじったすべての体験が、彼の芸に深みを与え、名人芸と言われるまでの落語を形成する大事な要素になっていたことが、絶妙のタッチで描かれている。

第三者が書いているだけあり、志ん生自身の手による、「ナメクジ艦隊」に比べ辛口なところが、彼の酒に対する甘さと調和していて、かなりの長編なのに、サラッと読ませてしまう。