中流階級のフランス人男性2人組、エールによる初の正式アルバムとなった本作は、ディナー・パーティー用音楽という犬も食わないサブ・ジャンルから軽やかに身をかわす。実際、本作の心地よいサウンドはモロにイージー・リスニング調で、エヴリシング・バット・ザ・ガールの『Walking Wounded』やポーティスヘッドの『Dummy』と並べても違和感がないのだが、あまりにも生気とフランス的なユーモアにあふれた内容ゆえに、白ワインのような退屈な音楽に陥ることがない。たとえば、ファースト・シングルとなった「Sexy Boy」はベロベロの飲んだくれ風エレクトロニカで、オモチャの猿について歌っている――上流階級にふさわしい話題とは言いかねるだろう。
本作のハイライトは、アメリカ人歌手ベス・ハーシュとの愛の結晶と言うべき「All I Need」と「You Make It Easy」だ。この2曲は、ハーシュの真剣さと誠実さをよく伝えており、エールの音楽的冒険の途上に強烈な愛のムチを入れてくれる。何も知らなければ、ハーシュの言葉は埋もれたジャズの名曲から採られたものと思ってしまいそうだ――それほど本作の仕上がりは見事なのである。(Charlie Porter, Amazon.co.uk)