オペラは、日本人には理解不能か!
★★★☆☆
演出のたびにいつも論議を巻き起こすコンヴィチュニーについての珍しい日本語での入門書です。コンヴィチュニーのこれまでの演出作品を取り上げて、それぞれの作品についての著者の解説が中心となっています。細かい説明により、これまではわかりにくかった彼の演出についての鳥瞰図を得ることができます。しかし、もうこのような形でしかオペラというジャンルが行き続けることはできないのでしょうか?著者自身もコンヴィチュニーのようなアプローチの今後の不可避的な陳腐化を、予測しています。著者は、”最後に”で、コンヴィチュニーのようなものを日本で期待することは非常に困難だと述べていますが、その理由は確かに納得のいくものです。でも東独という特殊な状況が生み出したグロテスクな観念がドイツ統一後にもいき続けるために必要とした変容こそが、コンヴィチュニーの演出の本質なのかもしれません。それを理解するのは、日本人には無理な話です。ただ234ページの結語は、この作品の存在意義をも否定するものではないでしょうか?ところで、最初の数章がいつも同じような内容の段落で開始されるのがさすがに気になりました。