本書は著者らが日本数学オリンピック本選合格者を対象とした強化トレーニングにコーチとして参加した際に用いたテキストを再編集したものである。秋山仁とピーター・フランクルはマスコミを通じておなじみだろうが、両名ともに世界的に著名なグラフ理論、組合せ数学の数学者。特にピーター・フランクルは自身が1971年の数学オリンピック金メダリストである。
本書は数学オリンピックを目指す中高生とその指導者に向けて書かれた本ではあるが、装丁、内容、編集から、「数学」そのものに興味を持っている中高生に「数学とはどのように行うものか」といった本質を伝え、培おうとしている姿勢がみてとれる。本書は「戦略篇」「実戦篇」「演習篇」「知識篇」の4部からなり、戦略篇では数学に挑んでいく際の「道具」の紹介があり、実戦篇では代数、幾何、組合せ論に大別して精選された問題とその詳説がある。演習篇では数学オリンピックの実戦さながらの「模擬試験問題」2回分と詳説があり、本番さながらに腕試しが行える(本番と同様に1日目と2日目の試験問題が分かれている)。そして最後の知識篇では、IMOの問題を解くのに必要となる定理や概念がコンパクトにまとめられている。
本書は数学オリンピックを目指す人はもちろんのこと、数学科への進学を考えている中高生から数学科大学院への進学を考えている人まで広く使える1冊である。(別役 匝)