このアルバムでは、特に [1] から [9] までの Sonny Stitt(ts)、Bud Powell(p)、Curly Russell(b)、Max Roach(ds) のカルテットによる演奏が、トリオ以外で Powell を聴きたい、心が躍るような Bebop を聴きたい、という方にお薦め。Sonny Stitt の、低音を響かせ、スピードに乗り、豊かさ溢れ、高揚感に充ちたテナーが、非常に良いです。
ところで、このアルバムを知ったのは、ピアニスト守安祥太郎のアルバム「幻のモカンボ・セッション ’54」のライナー・ノーツで、皆でこのアルバムを目標に演奏した、みたいなことが書いてあったことがきっかけでした。「幻のモカンボ・セッション ’54」、はっきり言って最高です。名曲につぐ名曲、日の出の勢いの Bebop 演奏がジャンジャンと続き、聴いていると余りの幸福感で気を失いそうになるほど物凄いアルバム。こちらも必聴です!
ここでのパウエルのプレイを神がかっていると表現するなら、スティットのプレイは神々しいと言える。まるであのパウエルが、お釈迦様の手の中で暴れる孫悟空のようにすら感じられる。ソニー・スティットって何というスケールの大きなジャズ・プレーヤーなんだろう。彼のアルトはダイナミックで軽やかだが、テナーはまるで大河のように淀みなく流れ、ドラマチックで男気のあるフレーズを奏でる。
アルバム前半は、スティットとパウエルの息づまる攻防。後半はジョン・ルイスがパウエルに替わって、ピアノの椅子に座る。J.J.ジョンソンの渋いトロンボーンも加わり、一転してまどろみの世界へ。ここでも主役スティットのテナーはブルージーに冴えまくっている。マックス・ローチとカーリー・ラッセルのリズム隊にも、全編を通し、一点の汚点もない。
もし完璧なジャズ・アルバムがあるとしたら、私にとっては正にこれがそれだ。まるで天上人達が奏でているような音楽。とてもこの世のものとは思えない。
屈指の名演だと思います、J・J・ジョンソンとのセッションも昔から名演と
して有名ですが、それすらも霞んでしまうような演奏です。
①~④ 1949/12/11 ⑤~⑨ 1950/1/26
Sonny Stitt(ts) Bad Powell(p) Curley Russell(b) Max Roach(ds)
⑩~⑰ 1949/10/17
Sonny Stitt(ts) J.J.Johnson(tb) John Lewis(p) Nelson Boyd(b)
Max Roach(ds)