相変わらずの読みやすさでサクサク進むが恋の進展は……?
★★★★★
読みやすくてサクサク進む割に物語の進展がちっとも進まないシリーズだが、本巻では少しだけ、というか朋美の心境が少し変化したようである。
【第十九話】文化祭的位置付けの『麗美祭』で急遽行われることとなったミスコンの顛末。冒頭で程良く出てきた理事長&深閑の驚愕(?)の事実が発覚する。ただ、肝心のミスコンは四季鏡(姉)の振る舞いを除けば意外な結果となり少々肩透かし。むしろ次話への導入といった感じである。
【第二十話】朋美(母)の企みで行われた彩京邸お泊まり会。意外に奥手な娘を後押ししようという朋美(母)のおせっかいに朋美は困惑だが読み手は楽しい展開である。ちょっとしたハプニングで朋美は自分の気持ちを少し理解したようだが、むしろこのハプニングの後がお約束展開ではなく朋美(父)の登場だったのが一捻りしていて良かった。朋美とセルニアはここで改めて正々堂々と勝負に挑む決意を固めるのだが、どうやらセルニアは朋美のことを女性としての器量を争うライバルと思ったフシがあってちょっとしたズレを感じる。
【罰ゲームな休日の過ごし方〜倒錯的に、新発見!?】偶数巻恒例の大地薫モノ。罰ゲームで秋晴とデートすることになったのだが、大地の世間知らず振りと異性への想いに対する無知振りが裏目に出てしまい、失敗ばかり繰り返す姿がらしくなくて残念。大地の心はときめきまくりのドキドキしまくりなのだが、それが何なのかまだ自覚していない。最後に導いた結論もズレていて「あれぇ〜」となる。
本巻で感じたのは、本シリーズが既に8巻まで達していながらヒロイン達の心境が「恋」にさえ至っていないことである。秋晴への「好意」は自覚していても「恋」とは自覚していない。もともとペースの遅いシリーズではあるが、まだここだったか、と少し驚いた。話は面白いのだが何とももどかしい。だが、引きとなった「数週間後」に何が起こるのか。ここに期待して次巻を待ちたい。