世界地図帳を傍らに置いて、読みました
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数年前にNHKで鳥の渡りを衛星を使って追跡する番組を観て、大変印象的だったのですが、先日書店で正にその衛星を使った渡り鳥の追跡をテーマにした本書を見つけ、早速購入しました。
研究者が一般の読者に鳥の渡り習性と生活に関心を持ってもらおうという意図で書かれた本なので、文章は読み易く、渡りのコースや移動距離も図版を通じてイメージし易くなっています。
手元に地図帳を携えて読むと一層、渡りのスケールの大きさを実感することが出来ます。
この本を読んで、子供の頃からの「渡り」に関する疑問の答えを得られ、興味深い事実を知ることが出来ました。
幾つか御紹介します。
1.鳥が渡りをするのは、寒さから逃れるためではなく、年間を通じて安定的に食料を確保するため。
2.渡り鳥が春に越冬地(南国)から日本へ渡って来るのは、春夏の日本の方が南国よりも沢山、食べ物となる動植物が発生するから。
3.鳥は、太陽・星座の位置や、地磁気に対する感覚で渡り先の方向を捉え、目的地に近づくと地形に関する記憶情報をもとに飛ぶ。
4.朝鮮半島の停戦ライン周辺は、シベリアや中国東北地方と日本の間を渡っているツル・ガンの重要な休息地点となっている。
5.日本からジャワ島まで遥か9千キロを、3ヶ月かけて飛行する鳥(ハチクマ)がいる。
そのほか衛星追跡には欠かせない発信器や、その取り付け方法(鳥を捕まえて、取り付けるのですが)、衛星追跡の国際的な取り組みについても、わかりやすく解説されています。
家並みをスイスイ飛び交うツバメに、思わず初夏の爽やかさを感じるかたには、きっと興味深く読んでいただけることでしょう。