海外の翻訳本だけど文章が上手い
★★★★★
名著だと思う。前書きにもあるように、文字とはなにか、という解説のために非常に広範な領域や分野を扱っている。
私はこの本で今まで意識もしなかったことだけど、表音文字と表意文字の意味から、日本語が音節文字であるということまで実感するようになった(音節文字ってなに?ということもわかりやすく説明されている)。
外国の全く見知らぬ文字でもどこの国が使ってる文字なのか、そもそも暗号にしか見えないそれが、今では意味は読めなくても「これは文字だ」と頭の底の部分で感じることができるようになった。
13pの引用
「世界で話されているどんな言語からも独立し、高度な哲学や政治学や科学のコミュニケーションに必要な「概念」だけにもとづく文字言語。
本書を読んでいただければ、この夢がどれほど魅力的に見えようとも、なぜ実現できないかが明らかになるだろう。」
こういう文字の説明だけに留まらない文字の可能性や未来性についてもふれられている。
文字というのは国が一つ違えば全く異質なものだと思っていたけど、人間と同じように人種の違いや進化の系図というものがあって、ある程度の共通性がわかるようになった(例えばインド・ヨーロッパ語族は、インドを占領したイギリス人が英語の法律をサンスクリット語に翻訳していたとき文法や単語に驚くべき共通性を見つけ、両者の先祖(語族)は共通の集団だったのではないかという話)。日本語の文法はSOV、英語はSVOと習ったけど、世界にはVSO型(アラビア語)、VOS型、さらにはOSV型、OVS型というものまである。つまりいくら異質の文字といえども人類には文字に対する共通の認識があるのではないか。
また本書のメイン部分はヒエログリフ・線文字B・マヤ文字の解読だが、この部分はどのように解読されていったかといいうのはわかったが、少し難しくて仕組みはよくわからなかった。
良い本だと思う。世界が広がります。
良書です。
★★★★★
翻訳文もこなれており図版も豊富、そして何より内容が素晴らしいと思います。この本に触発されて、「線文字Bを解読した男」と「マヤ文字解読」も購入してしまいました。しばらく「文字」で楽しめそうです。
文字を解読できる楽しさを味わえる
★★★★☆
ヒエログリフ、漢字、楔形文字、ルーン文字、アルファベット、マヤ文字、かな文字などなど文字のしくみと歴史が、幅広い分野の学説に基づいて、懇切丁寧に解説されています。
本書の特徴は、貴重な資料・写真・図版に多くの紙面を割いていることだと思います。
ヒエログリフ解読のカギとなったロゼッタストーンや、線文字Bの解読が正しいことを裏付けたピュロスの粘土板、マヤ文字解読のカギとなった『ドレスデン・コデックス』などなど貴重な文字を見ることができます。
また線文字Bとキュプロス文字など、対応させた表なども見ることができ、まるでパズルを解いていくように、文字を解読できる楽しさを味わえます。
文字の歴史は私たち人類の歴史
★★★★★
数々の文字に関する出版物のなかでも、本書は人類学、考古学、美術史、経済学、言語学、数学、政治・社会史、心理学、神学といった幅広い分野に基づいた解説がなされ、古代の文献や、中世やルネッサンス期の写本や、装飾文字、活字、印刷技術などにもふれています。
文字の歴史は、思考と心をなんとかして残してこようとした私たち人類の歴史でもあり、それを読み解くことによって、私たち自身のことがいっそうはっきりとしてくるのだと思います。
本文では詳細な解説がなされ、図版や写真も多く、文字を研究したい人にももっとも最適な本であると言えるでしょう。