40年に及ぶレコーディング暦を徹底的に網羅するには2枚のディスクでは足らない。その時代でもっとも重要で多作なアーティストのひとりを扱ったレトロスペクティヴともなればなおさらだ。というわけで、『Essential Bob Dylan』は、ボブ・ディランのとてつもなく奥深いキャリアをバッサリとカットし、記念碑的な最初の6年間をディスク1に、続く34年間をディスク2にまとめている。本作はこれまでにコロンビアから出たディランの3つのベスト・アルバムよりもディープな内容となっていて（だが今回は奇妙に心洗われる大ヒット・シングル「I Want You」が収録されていない）、いくつか驚かされる点がある。「Mighty Quinn (Quinn the Eskimo)」が『Self Portrait』収録のリメイク版ではなく『The Basement Tapes』のヴァージョンだったり（『Greatest Hits Volume II』にはリメイク版の方が選ばれていた）、映画『Wonder Boys』のサウンドトラックから「Things Have Changed」が収められていたりして、うるさ型のコレクターをニヤリとさせるのだ。ただし、30トラックから成るこのダイジェストは、ディラン研究家ではなく入門者を対象につくられている。（Steven Stolder, Amazon.com）