よりシンプルな羅針盤
★★★★★
久々の純うたものとなった山本精一の2010年新作。基本的なソングライティングは羅針盤をもちろん思い起こさせつつも、ソロということでよりミニマルな音世界を追求した作品となっています。ラフなカッティングなギターが特に印象的で、広がる音響というより、隙間を感じさせる音響空間を構築しています。歌詞は、何というか今の時代を反映した先の見えない世界を心象風景的に描いていて、この辺は今までの羅針盤とはかなり違う印象です。羅針盤は世界の成り立ちそのものを歌っていたという感じだが、今回はそこに個人的な視点が強く関わっている気がします。それにしても、最終的には、やはり山本精一という音楽家(ソングライター)は、やはりワンアンドオンリーだなというのも再認識させられた一枚であります。
歌詞に痺れました!
★★★★★
バンドの音での歌モノということで、聴く前はやはり羅針盤を思い浮かべ、
実際聴いたところ、基本的には羅針盤に近いと感じましたが、歌詞がとても沁み込み、
ギター、ベース、声が山本さん1人、ドラムが千住さんということで、
より歌とギターが前に出てる感じがして、
山本さんの色を近くに強く感じられるアルバムだと思いました。
山本精一&PHEWの大傑作『幸福のすみか』から、
「飛ぶひと」がエレキの弾き語りで収録されていて
(後半のギターのコードがオリジナルと若干異なり、後半が際立ってるように感じました)、
シンプルな音が、逆にこのアルバムの目玉になってると思います。
歌詞とメロディが直に伝わり、改めて凄い歌だなぁと思いました。
アルバム通して、淡々とした歌とアレンジが中心ですが、
個人的にはとても感情的というか、感情を揺さぶられました。
現実的なようで夢想的なような、実体があるようなないような、
感情的なようで無感情のような、悟りのようで肉体的なような、
優しいようで冷たいような、暖かいようで怖いような、
そんな独特の空気に溢れた、永く聴き続けられそうな、
聴くたびに発見がありそうな、名盤だと思いました。
永く聴いていける歌が増えて有り難いです。