インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

世界の歴史〈12〉ルネサンス (河出文庫)

価格: ¥893
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
Amazon.co.jpで確認
世俗化と原理主義の狭間で ★★★★★
 本書は大正生まれの二人の西洋史研究者が、1960年代に世界史通史の一巻として刊行した本を89年に文庫化したものであり、前半のルネサンス期を会田が、後半の大航海時代と宗教改革期を中村が担当した。日本の西洋史研究に批判的な会田は、「あくまで日本人として外から」西洋史を眺める立場をとり、商業革命によって急速な都市化を遂げたイタリアで、生の人間性がむき出しになる激しい権力闘争の中から、宗教的な世界観に代わって合理的でシビアな世界観が生まれてくる事実を重視し、大事件が無くすぐれて文化的・思想的現象であるルネサンスの諸側面を、軽妙な語り口により追う形でそれを提示しようとする。他方、中村は宗教の純粋化が政治と絡み合って展開する宗教改革の時代を、時系列を追う形で手堅く簡潔にたどっていく。ルネサンス人の中には人間性の弱さを媒介にして、世俗主義と宗教心とが共存しており、国家の発展と共にカトリック教会の世俗化に対する批判的視点が強まっていった。そうした視点が人文主義、宗教改革(ルター派、改革派、再洗礼派、イギリス国教会)、対抗宗教改革の共通の土壌となるのであり、それらの宗派対立が諸階層を巻き込む政争と絡み合う中で、宗教戦争が頻発する。そうした長期にわたる流血の惨事の中で、初めて宗教の比重の減少と理性の重視がヨーロッパで決定的になっていくのである。以上のように、本書は二人の著者の微妙な史観の相違をはらみつつも、近世社会形成期の西欧の大きな流れを、具体的な事例を交えて生き生きと平易に描いており、2004年に10刷が発行されていることからもわかるとおり、入門書として現在でも有益である。
濃ゆ〜い歴史入門書 ★★★★☆
本書のような名調子の、そしてそれだけ偏見にも満ちた、しかし頗る面白い歴史書が文庫にあることを寿ぎたい。会田節全開! そう『アーロン収容所』の会田節だ。
歴史観を巡るドイツ派の中世・ルネサンス連続説を大人の視点からばっさり切り、決め所では西洋に対する東洋の優位をさえ盛り込む。所詮評者など永遠の歴史入門者、詳細な歴史論争には加われないが、明らかな偏見である。しかしながら、この名調子は捨てがたい。とにかくほとんど無知な読み手であるこちらが、その面白さに刊措くを能わず。
最近出た丁度同じルネサンス時代の哲学史を扱ったシリーズと比べて見られよ。学問的には正確なのかも知れぬが、執筆者や編集者の熱意からして全く違う。面白さに、そして啓蒙精神に溢れているのだ、昔の方が。そしてその面白さは、執筆者の感懐する思想が何であれ、やはり教養としか言いようのない精神に満ちている。端的に言えば、現在の執筆者には教養がない。
歴史を紡いでいる強靭な精神を万象から掴み取ろうとする歴史家の執念と言ってもよい。
会田雄次にはそれがある。だから怖い面がある。しかし、そうしたものからしか人は学べないのではないか。中立中性な無菌状態のクールな言語など、この世にはない。現在あるのは、クールを装ったうす〜いインテリちゃんの御託ばかりである。
先の新刊「哲学史」の『ルネサンス』はその典型だ。しかし、少し訂正を。宮下史朗の一編「図書館、書斎、そして印刷術」は名編だ。彼に一冊書かせるべきだった。
溢れ出る懐疑の奔流 ★★★★☆
 本書がその一冊である、この世界史シリーズにはひとつの大きな欠点がありまして、残念ながら、本書もその例に漏れません。それは共著書である場合、その執筆分担が不明確であるということです。大体の分担説明はあるものの、まめな本では章、節に至るまでその執筆分担が明示してあるものもある中、本書はきわめて不親切と言わざるを得ません。よくよく読めば、皮肉と機知に富んだ会田氏の文と、学者らしい誠実さの垣間見える中村氏の文章を見分けることは不可能ではないかもしれません。しかしそういう問題ではない。私は、このような一般概説書も学問的な世界と繋げて欲しいのです。詳細な注があってもよいぐらいです。それが、ひとつ歴史学に止まらず学問的一般書であるなら、誠意というものと思います。本書が興味深い指摘を多く含んでいるだけあって残念でなりません。
 内容としては、表題は「ルネサンス」とありますが、それに加えて宗教改革も含んだものとなっています。コインの裏表の様なこの不可分の二つの事象を二人の著者が要旨を抑えて分かりやすく説明されており、内容としてはよいものであると思います。特に会田氏の執筆と思われる部分は、今までの文芸の花咲き誇るルネサンス、という印象とは一味違った、この時代の影の部分を合わせての描写と成っているところ、とても印象深いものがありました。いわば、ルネサンスの花の根元、その堆肥をも含めての全体像と言えます。当然その堆肥は盛大に悪臭を放つものですが、しかし取り澄ました、味気ない偉人伝にルネサンスの時代を貶めることなく、その全体像を描き出す、会田氏の皮肉たっぷりのルネサンス観は、痛快さを含んでおもしろいものです。私としては、その皮肉が利きすぎて冷笑的に見えるところがどうも違和感がありましたが、どうしても地味になってしまう中村氏の分担部分との対比が、二つの事象の差異をより浮かび上がらせる効果をあげています。
名著 ★★★★★
ご存知のように、会田氏はすでに故人である。多くの警句を発し続けてこられて、歴史の要諦を押さえた批評書は多くある。そのなかで、本来の歴史学者として純粋な歴史の解説教科書は、私の知る限り非常に少ない。これはその中の一冊である。専門のルネッサンスについては、独自の視点と解釈を加えられ、しかも切れ味のいい明快な語り口を是非ご賞味していただきたい。塩野七生の「ルネッサンスとはなんであったか」と比較して読むと、洞察力と切り口の差が分かって興味深い。ただ、後半の中村氏の書いた部分には、会田氏のような凄みのある切れ味は無いように思った。
混迷を深める現在の日本でこういった本が読まれなくなったことは、とても残念であることを付言しておきたい。