果敢な挑戦は評価するが…
★★★☆☆
この著者の既刊の著書にも共通することだが、困難で出口の見えないテーマに敢えて取り組み、一定の成果を出している点は高く評価したい。ただし、一人でチャレンジしているだけに弱い部分があるのも否めない。『バルカン音楽ガイド』もそうだが、詳しく調べ、自分の足でたどったと言っても、やはり限度がある。ロマを取りまく環境は(彼らの住んでいない日本では想像をするのが難しいほど)複雑な様相を示しており、一人の人が10年、20年取り組んでも容易に見えてくるものではない。また、彼らの使う言葉を話せない他者に本音をそう簡単に語らないのもロマの特徴といえる。研究者では決して言い切れない明快さで記述しているため分かりやすいが、同時にそれが弱点とも言える。なにより、この程度の経験で『〜の真実』と言い切ってしまうセンスがいただけない。