新司論文対策の超大型新人デビュー!
★★★★★
本書は、問題と解説から成っています。
で、その問題ですが、ほぼ完全に新司法試験公法系第2問と同じように作成されています。
つまり、
【事実→弁護士のやりとり→資料→設問】
という流れです。
これまでは事例研究行政法が最も新司対策に向いていると言われてきましたが、
本書の登場で認識が改められるのではないでしょうか。
もっとも、両方とも同じ出版社ですけど(笑)
ゼミで使ってもおもしろいですし、一人でコツコツやるのも問題ないです。
解説の質についてはまだ何とも評し難いですが、かりに解説で悩まされても、
問題の質がよければよろしいかと、私は思います。
予備校に通ってる方は普段からこういう形式の問題を訓練されてるのかもしれませんが、
予備校に通っていない私のようなロー生にはとにかく嬉しいかぎりの一冊です。
本のタイトルから、一見問題集のようには感じ取れずにスルーされてしまうと思いますが、
認知が広がるであろう今後は、急激にシェアを伸ばすことが期待される一冊でもあります。
上級行政法(非売品)にそっくりなのはなぜ?
★★☆☆☆
新刊をJR東京駅前丸善にて購入。電車のなかで通読。翌日カバンから取り出して要所をもう一回見直した。
それでどっかで読んだなあという感覚をもったのでよく考えると、これは「上級行政法」(小早川他著)の
焼き直しです。判例の選択が相当数同じ。
その読書感想文をそのまま解説にして出版したみたいな実質があります。
わたしは徹底的に一行一行読んで批判していくような受験生ではありません。
行政事件をけっこう扱ってる事務所の駆け出し弁護士のインプレということでご了解ください。
資料が各問題についているがジュリスト特別号のような資料ではなく、副読本のような軽いものです。
★ レベル的には、有斐閣の事例演習より低いところを狙ったものです。
しかし、ため口の会話文など工夫してある割には、けっこうごちゃごちゃしている。
★ このタイプの法律書を読んでいくと、いつも何か絶望的な気持に襲われる。つまり「非現実的」。
★ 田中二郎・塩野宏のメインストリームではないし、法律実務家の考え方への配慮がもうすこしあってもいいのでは?
裁判実務では,刑事は(実体法も訴訟法も)やっぱり団藤だし、行政法は田中二郎だから。
大家の残した理論には、やはりあいさつ程度はしたほうがいいのでは?
★ 行政訴訟のほんとの専門家は忙しくてこのタイプの本を出していないので、国家試験受験生はかなり困っているのが実情。
★ この学習参考書は、貧窮にあえぐ行政法分野で、どの程度の受け入れられ方になるのか?
受験本番から年数がたってしまって臨場感を忘れかけているので、断定的なことは控えますが、
これ読んでも、合格答案は書けないのではないかなと思う。人それぞれでしょうが、論点の切り出しが事例とずれているところが多いと
思う。典型論点を問題にセッティングするときに、ミスがあるのでは?
実務書としてみると、行政法の通説というか実務的な取り扱いの基本(東京地裁行政事件専門部あたりの共通の知識ベース)の
書き込みが足りないのではないかと感じる。
★ 最新の法改正などの情報にうとい。これはけっこう致命的かも。
改正法のもとでの先端的な話題に乏しい。これは多くの受験生にとっての不満点でしょう。
それにしても、徹底的で本格的なケースブックを研究者は上梓しない。
でこのタイプのイージイなものしか出さない。つまり「寄せ集め」。
出版事情が悪いためか、それとも、研究者の脳のエネルギーレベルが低いためなのか。
聞くだけ野暮でしょうけども、法科大学院時代に入り、ますます寒心に堪えないとおもうのはわたしだけじゃないとおもう。