時空を超えて
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出張中の名古屋駅のキオスクで購入した。ローカル線でのんびり岐阜県を行きながら ゆっくり読んだ。
僕にとって 入江という写真家は特別な方である。もちろん僕以外の人でも 同じ想いの方も非常に多いとは思うのだが。
中学の頃に和辻哲郎の「古寺巡礼」に魅せられて 奈良が好きになった。中学の卒業旅行でも一人で奈良を旅行して以来 奈良を訪れた回数も十回を超えているはずだ。
同時に奈良を扱った本も読んだ。「大和古寺風物誌」「大和路信濃路」「早春の旅」などは今でも時折読んでいる。
入江もそんな僕の奈良好みの中に位置していることは言うまでも無い。
入江は風景の写真が有名だが 今回本書で仏像写真をじっくりと見る機会を得た。選り抜いた写真ばかりなので どの写真も美しいし 第一 以前見たことがある写真ばかりである。
見ていると 日本の仏像の持つ美が実に良く分かる。東南アジアの仏像を見る機会にも比較的恵まれた僕にして やはり日本の仏像が一番美学的に美しいと思うのは 日本人の贔屓目だけではないと思うのだ。
こういう写真家は今は居ない。古い写真といえば古いのかもしれないが 見ていて感じる美学は 既に時空を超えはじめている。僕はそう思う。