井口昇が監督したTV版の第１話、11話、12話（最終回）の3本をメインに編集し、途中に幾つか他のエピソードのダイジェスト場面を織り込んだ第１部と、幻のパイロット版という触れ込みで映画用に撮り下ろした西村監督版『ドグちゃん』の第２部という構成。
谷澤恵里香がカメラ目線で観客に語りかける新撮カットと、悪乗りの変てこコマーシャル映像が節目ごとに挿入されているが、ＴＶシリーズを既に見ている人にとっては非常に物足りない内容だろう。亜紗美が白目を剥きながら異様なテンションで演じている第２部のドグちゃんに乗れるかどうかが微妙なところ。
映像特典は劇場予告編と20分弱のメイキング。ビルの屋上で撮影された、法被姿の谷澤恵里香が憑かれたように踊り狂う導入部の撮影風景と、第2部の西村組のビハインドなどでちょっと物足りない。

『ドグちゃん』未放映の地域の人には、作品の雰囲気やノリが楽しめる。TVシリーズのDVDを既に購入しているコアなファンにはコレクターズアイテムとしての意味ぐらいはあるだろう。でも音声は普通の2chステレオで画質はTVドラマ並、封入特典は上映館で売っていた折りたたみ式のパンフレットだし、価格はもう少し抑えても良かったかな。

第1部はTV版のダイジェスト…というより、ほとんど第1話と最終話のみのダイジェスト。追加された場面もあまり意味がありませんし、TV版を全部見ていたら第1部を見る必要はありません。
TV版を見ていない人にとっては、ドグちゃんというキャラクターに思い入れが沸いていない状態であの終わり方を見せられるわけで、これを高く評価するのはちょっと難しいです。

本物のアレが出て来て誠を諭す場面は何度見ても泣けます。今回も泣きました。
でも、第6話「人形つかい」のエピソードがあの場面の重要な鍵になっているのにそれが端折られているので、この映画で初めてドグちゃんに触れる人には伝わらないような気がします。

第2部はパイロット版…と称した「西村版ドグちゃん」でしょう。ほとんどセルフパロディの領域です。
内容は予想通りのエログロナンセンス。パロディとして見れば素晴らしい出来ですが、これ単独だったらちょっとお金払いたくないです。
なお、本編のドグちゃんを演じた谷澤さんも「謎の美少女」として出演しています。

オリジナルは文句なしにお勧めできる名作ですが、これ単体ではさすがにちょっと評価を下げざるを得ません。
オリジナルを見ていない人は先にリリースされているTV版のDVDを見てからこれを見るべきです。