訳者のあとがきにご注意!
★★★★★
新装版が出たんですね.
(旧版は天野喜孝氏のイラストでした.)
文章が絵画的なイメージに溢れる傑作だと思います.
確かに最初は取っ付きにくいのですけれど,読んで損はありません.
お勧めです.
ただし,二巻か三巻の訳者のあとがきに思いっきりオキテ破りのネタバレがあります.
昔読んだときに怒りにふるえたことを今でも鮮明に覚えています(思い返しても腹が立つ).
新しく読まれる方はご注意を.
《唖然、呆然》の傑作。
★★★★★
この本を読む秘訣は、なによりも《忍耐》でしょう。特に前半は、無意味なエピソードの羅列としか思えず、非常に退屈しました。ところが3巻を越える辺りから、バラバラだと思えたエピソードが、緩やかなまとまりを見せてきます。そして4巻に至って、《唖然、呆然》のラストへと辿り着きます。さらに、全てを読み終わった後、初めて、無意味に見えた全てのエピソードが、重要な意味を持っていたことに、改めて気付かされます。後は、再読あるのみです。再読マニアにとってはたまらない、まるで巨大な《宝石箱》のような傑作です。
なんで新しい太陽が平積みに??
★★★★★
うそ、カバーが変わってしかも本屋で平積み!?。まさか映画化?(またジブリ?汗)...ではなく(安心つーか)、5巻目の"urth"の翻訳出版にあわせたイベントのようです(まってましたよん)。人類が星々に進出しやがて衰退した終末期の地球の物語。まだ発明されてもいない未来の言語で記述された物語をウルフが英語に翻訳した、という設定だ。例によってウルフは信頼できない作者でここでも読者を欺く。遠未来のテクノロジーをなんと神話やファンタジーの用語(古語っつーか)に翻訳投影してしまったのだ。ファンタジーのつもりで読んでいると次第に見えてくるSFのガジェット、とてつもない世界観。この手のサイエンスファンタジーは途中で作者が舞台裏を見せてそこから先はSFに変身するものだがウルフは最後まで正体を明かしてくれない。もしかして多くの読者はたんにファンタジーとして4巻まで楽しめちゃうのだろうか、平均的読者象にとても興味有り。SF好きなら辛抱して読めば必ず報われる。解説、評論は多数あり、日本語ならultan.netがお勧め。
重厚で味わい深い傑作の復刻版
★★★★☆
世界幻想文学大賞受賞作品。
表紙にデスノートの小畑健のイラストをつけての新装版です。良くも悪くもジャケット買いで売り上げが伸びそうな感じで平積みにされています。もともとが古典として有名な作品ながら手をつけていなかったので、これを機に新作も出るということだしと読んでみました。
まず、全体的な構造としては長編叙事詩ということで、異世界を舞台に、主人公があちらこちらに遍歴を重ねるというファンタジーの王道を重ねていく基本ラインをしっかり踏襲しています。ただし、すごく特徴的な点が二つあり、それがこの作品の敷居を高くしています。一つには、幻想の部分が極めて強く主人公の独り語りで進んで行く世界について説明らしい説明は数少ないのにも関わらず、奇妙で風変わりで多層重層な世界を主人公が体験していくので、まさに幻想の世界にいるようでちょっと気を抜いたりぼんやりしていると話の筋においていかれそうになります。そうした異世界への浮遊感それ自体はファンタジーとしては優れている証拠なのかもしれませんが、最近のわりあいと易しいファンタジーになれていると骨が折れます。第二に、主人公が拷問者(文字通り、拷問を生業とし人に苦痛を与える力を習得している)という極めて特殊な職業についているため、人によっては感情移入がしがたい部分があるかと思います。
ただ、この二つの特徴があり敷居が高くはあるのですかけれど、昨今には珍しい異世界ファンタジーをしっかりと読んでいる充実感(このあたりはたぶんに主観が混じっているかも知れませんが)、奇妙ながらかっことした作品世界を旅しているというような感覚が読んでいる間にあり、本を読むという行為を儀式として違う世界を見ているような感覚を与えてくれます。良い悪いは別としてこれは読書の楽しみの根幹部分で極めて優れているように思います。
そして、はっきりと解説されていないながらもSFでありファンタジーである本書の独特の語彙は、作品世界を優雅に彩っています。ということで、少し敷居が高い作品ではあるものの、このテルミヌス・エストという大剣を携えた拷問者セヴェリアンの物語は順次読んで御紹介していきたいと思います。まずは復刊の四部作。そして新しい太陽の書と続いて行きます。