ジャズとはかくあるべし
★★★★★
フランスの生んだ偉大な巨匠ステファン・グラッペリと天才ミシェル・ペトルチアーニの音楽が寄り添い、芳醇な香りを漂わせながらステキなジャズが流れているという至福の一時を過ごせるアルバムです。
1995年収録当時、グラッペリは87歳、ペトルチアーニは32歳、年の差を越えてジャズを愛してきた二人の思いの結実を聴くことができます。そして収録の2年後にグラッペリが、4年後にペトルチアーニが鬼籍に入ることを思えば、よくぞアルバムに残してもらっていたな、という感慨が浮かびます。
87歳という年齢を微塵にも感じさせない凄みと、身体のハンディキャップなどなにするもぞという二人の気迫に圧倒されます。そこにはただ自分達の愛するジャズを演奏できる喜びが存在しており、慈しむように互いを思いやっています。疾走感が快感となって伝わり、スタンダードを演奏しながら、そこにはエスプリにも似た感性のぶつかり合いが感じられます。奏でられる音楽の美しさと豊かさにリスナーは無限の喜びを得ることになりました。
ロイ・ヘインズのドラムスもジョージ・ムラーツのベースも二人の巨匠に臆することなく関わっている様を聴き取れます。
何なんでしょうね、この自由な音楽の雰囲気は。豊かな人生の過ごし方を奏でられるジャズから得ているようです。美しい物を愛する喜びを聴衆に与えるために、ミューズの化身となって降臨したかのようです。どの曲がよかったなどと不遜なことは申し上げません。ただただ2人の出会いに感謝するのみです。