民話を題材とした文明批判
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小さい頃に老人によって語られ、本を読んでその世界に思いをはせた昔話・民話の世界。自然を尊び、神を畏れ、人を敬うこと、あるいは過酷な運命をそのまま受け入れて、報われない一生を終える人々が語られていた。「夢」はそもそも儚いものだと語られていた。その現れと伝承が「物語」だった。ところが現代では「夢」が「大望」と同義で使われ、「夢」と「現実」が混在するようになり、「仮想現実」という新たなまやかしが幅を利かせている。昔話の主人公たちの苦難や嘆きを通して、「物語」の精神が薄れていく現代を憂い、警鐘を鳴らしている。