相互理解不能な理由
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本書を読む前、私は恥かしながら『高麗史節要』という歴史書の存在を知らなかった。朝鮮は基本的には長く中国の冊封体制に組み込まれていたから、中国のひとつの州の様なものであり、地理的な理由で中国の影響力が及ばない分だけの独自性(歴史と文化)しかないと思っていた。どこの学校でも仏教の伝来、白村江の戦い、文禄・慶長の役、韓国併合の4つしか教えない。朝鮮史には教えるべき内容がないのかと思っていた。
ところが本書である。本書には500年間という徳川政権の倍近くも朝鮮半島を治めた高麗の(悲惨な)歴史が細かく紹介されている。中国や西欧の歴史に興味を持っても、隣人の歴史に興味を持たなかった視野の偏りを反省するしかない。
日本は島国である。朝鮮は島国ではない。半島国である。半島国ということは、大陸と地続きということだから、大陸の影響は小さくない。海水で隔てられた金属間ではなかなか熱が伝わらないのに対して、金属同士が繋がっていれば熱がジカに伝わるのと同じである。島国と半島国、この違いが両国の国民性を似ても似つかないものにしてしまった、というか、相互理解不能にしたということが本書を読んで解ったこと。