本文550p超、出典＆人名索引を含め586pの大著。
本文は大きく国内政治、軍事、経済、対米関係、対近隣諸国関係（対日もこの枠に）
という、５つのテーマに分かれています。

　細目を一部紹介すると…プーチン来歴、報道の仕組みと実情、軍効率化の実情
資源大国として復活する現実と今後の課題、NATO拡大やMDシステム等を通じての
対米交渉、CISや上海協力機構に対するロシアの考え方、北方領土を巡る日ロの
応酬等々…というように、前述したように大きなテーマで括られてはいますが
自分に関心のある所から読み進めることが出来るようになっています。
（関連した話題が出てくる場合は、第○章の××も参照、と補足有り）

　ソ連が崩壊して20と数年。その間、ロシアの動きやロシアを巡る情勢は、当時の
人には想像出来ないくらいに目まぐるしく変わっています。
その20年と数年を濃縮した一冊です。各細目の記述が充実しているのは書くまでも
無いですが、それらを補足する図版も多数掲載（当然、見やすい）。更に企業や
新聞等の固有名詞については露語＆英語読みを併記しているので、自分で詳細を
調べたい場合に直ぐ動けます。

　何より、著者は元日経の記者（現在は編集委員）です。だから、一般の人にも
分かる平易な文章で書かれています。ロシア連邦について学ぶ最高の教科書
（2010年7月時点）と言っても過言ではない出来。

　世辞抜きで値段分以上の元が取れる一冊です。

ロシアについての本はいろいろありますが、変わりゆくロシア事情で、１年後には全く内容が古くなります。
この「現代ロシアの深層」という本は、今のビビッドなロシアを知るのにはうってつけです。
なかなか厚い本ですが、実際どの章から読んでも問題なく、知りたい分野、興味のある情報のみその都度読むことができます。
著者が学者じゃない点もあり、あまり偏った内容でもなく、ロシアビジネスやロシアと関係のある方面に従事している方々には
よい参考書となります。