1971年に、テレビ用アニメーションとして初登場以来、いまなお根強い人気をもつ『ルパン三世』の全記録。1996年の初版本の増補改訂版で、最初のテレビシリーズ（いわゆる「旧ルパン」）から、1998年のテレビスペシャル版まで、約30年分のデータがびっしり詰まっている。巻頭のインタビューと巻末のテレビ・映画全記録は貴重だ。

   インタビューは、原作者モンキー・パンチ、旧ルパンの作画で腕を振るった大塚康生、ルパンの声といえばこの人しかいない山田康雄、そして『GHOST IN THE SHELL“攻殻機動隊”』などを監督した押井守。なぜ押井が登場するかというと、実は『カリオストロの城』に続く劇場版ルパンの3作目を手がけるプランがあったからだ。残念ながらそれは幻の「押井ルパン」となってしまったのだが、その顛末が興味深い。また、テレビシリーズ「新ルパン」の監修をした映画監督・鈴木清順や、旧ルパンの演出を担当した大隈正秋への取材もある。

   各シリーズでのキャラクター比較は、デザイナーによって、さまざまに変化した登場人物たちが一望できて楽しい。マンガ家・江口寿史もデザインしていたのだ。さらには、ルパンのフィギュアシリーズの紹介やら、目黒祐樹主演の実写版ルパン三世の記事もある（なんと次元大介は田中邦衛で、銭形警部は伊東四郎なのだ）。

   ルパンと聞いて、人それぞれに思い入れのあるシリーズやキャラクターがあるに違いない。もう一度、ルパンワールドに浸ってみるのも悪くない。（文月 達）