柳沢吉保とそれを取り巻く人物たちが豊かにしてきた江戸文化
★★★★☆
フィクション作品等で不人気の柳沢吉保であるが、本書は彼の時代と彼を取り巻く人物に焦点を当てて、その正当な歴史的役割を明らかにする。
六義園のプラン、彼の周囲の女性たち、荻生徂徠といった賢者たちとの関係を通じ、「源氏物語」「古今和歌集」に代表される、それ以前の伝統文化を整理・復興させ、後の文化成熟、さらには幕末維新をも可能した「地ならし」を展開したことを示す。
そして、なぜ彼が「悪役」を引き受けることになったか、表象文化論的に考察し、その文脈をえぐりだす。
副題に「元禄ルネッサンス」と付けられているが、戦国の終わりから数十年、猛々しい「武」の精神を保ちつつも、優雅な「文」が培われていく元禄の知的空間がビビッドに味わえる一冊となっている。